石破政権の課題 ポピュリズム横行が目に余る
読売新聞 / 2025年1月6日 5時0分
◆難局の舵取りを任せられるのか◆
少数与党が、政策を実現させるために野党の協力を仰ごうとするのはやむを得ない。
だが、政権の維持に執着するあまり、財源の確保を棚上げして減税などの要求を唯々諾々とのんでいたら、国力は低下してしまう。そんな政治をいつまで続けるのか。憂うべき事態である。
衆院で与党が過半数を失った昨年の臨時国会は、石破政権の低姿勢ぶりが際立った。
◆熟議には程遠い国会
国民民主党の協力を得るため、所得税の課税が始まる「年収の壁」の見直しに動いた。日本維新の会にも秋波を送り、維新の掲げる教育無償化の協議を始めた。
石破首相はこうした国会・政局運営を「幅広い合意形成を図るよう努力してきた。まさに熟議の国会になった」と評価したが、自らの延命目的で野党の「機嫌取り」をしているだけのように映る。とても「熟議」とは呼べまい。
内外の課題は山積している。ポピュリズム(大衆迎合主義)的な政策を進めるだけでは、難局を乗り切ることはできない。
日本の人口は毎年のように数十万人規模で減り続け、少子化に歯止めはかからない。
政府は「賃上げに取り組んでいる」と強調しているが、実質賃金の伸びは限定的だ。
児童手当の拡充など、給付に偏った従来の少子化対策を練り直し、社会全体で子育てを支えていく仕組みを改めて考える必要があるのではないか。税と社会保障の制度を、より均衡のとれた形に改革していくことも大切だ。
国際情勢が激変している中で、日本の外交力が試されている。
中東ではパレスチナ自治区ガザでの戦闘による犠牲者が増え続け、人道危機は深刻だ。来月で3年となるロシアのウクライナ侵略を巡っては、欧米の「支援疲れ」が目立っている。
中東諸国と良好な関係を築いてきた日本は、停戦に向けた協議を仲介するなど、もっと役割を果たせるはずだ。ウクライナ支援では、ミサイル防衛の装備など、防御に限った武器の輸出に道を開くことを検討してもいいだろう。
悪化した日本周辺の安全保障環境への対応も、待ったなしの課題だ。防衛力の向上や日米同盟の強化、日米豪印など多国間協力を深めていく必要がある。
◆外交力が問われている
多くの難題を抱えているのに、就任から3か月たった首相がいまだに日本の進むべき針路を示せないでいるのは嘆かわしい。国の
国会論議は昨年、自民党の政治資金問題一色だった。収支報告書への不記載は厳しく批判されなければならないが、この問題だけが国家の一大事であるかのように、「徹底追及」に専念する野党の姿勢には、違和感を禁じ得ない。
今月下旬に始まる通常国会では重要法案の審議が控えている。
政府機関や重要な社会インフラへのサイバー攻撃は相次いでいる。大規模な被害を未然に防ぐための「能動的サイバー防御」の法制化は急務といえる。
政府は年金改革で、厚生年金の加入要件を変更し、多くのパート労働者などの加入を義務づける方針だ。
将来受け取る年金が増す、とメリットを強調しているが、企業などからは、保険料負担が増えることへの反発も出るだろう。
政府が、どれだけ納得の得られる説明をできるかが焦点だ。
立憲民主党など野党は、選択的夫婦別姓を実現するための法案を提出するとみられる。
首相も同調姿勢といわれるが、選択的夫婦別姓は、社会や家族のあり方に大きな影響を与える。
夫婦が別々の姓を名乗る場合、子どもが、父親か母親と別姓になるといった問題を軽視すべきではない。国会運営への配慮で判断を間違えるようなことがあってはならない。慎重に議論したい。
◆民主主義の根幹を守れ
与野党は2013年、有権者の政治参加を促進しようとインターネットによる選挙活動を解禁し、ネットの活用を広範に認めた。
しかし、昨年の兵庫県知事選などでは、SNS上に真偽不明な情報が大量に出回った。偽情報が選挙結果に影響を与えかねない事態を放置することは許されない。民主主義の根幹である選挙の公正さをどう守るかは重い課題だ。
今夏には参院選や東京都議選が予定されている。与野党は、選挙に関するSNS規制についての議論を急ぐべきだ。
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