犯罪追徴金、「取りはぐれ」急増…累積の未収金が16年で2・7倍の1251億円
読売新聞 / 2025年1月6日 7時30分
薬物の密売や詐欺などの刑事事件の判決で被告に科され、検察が徴収する「追徴金」の累積未収総額が2023年度末時点で、1251億円に上ったことが最高検への情報公開請求でわかった。07年度末の449億円から2・7倍に増加した。被告に十分な財産がないことに加え、犯罪組織のマネーロンダリング(資金洗浄)が巧妙化し、捜査当局の追跡が困難になっている。
読売新聞の情報公開請求に対し、最高検が開示した資料によると、前年度までの未収分と23年度中に新たに確定した追徴金は計1326億円。このうち、23年度に検察が徴収できたのは61億6500万円(4・6%)にとどまった。
また、被告に1円も納付させられないまま1年が経過し、刑法の規定で時効となる場合などに、検察は「徴収不能」と決定しており、23年度は13億6400万円が未収額から除外された。
これらを差し引き、24年度に持ち越された累積未収額は1251億円で、07年度末の449億円から大幅に増えた。
検察は組織犯罪処罰法に基づき、被告を起訴する30日前から犯罪収益の差し押さえ(保全)が可能だが、すでに被告が金を使ってしまっていることが多い。検察幹部によると、近年は、犯罪組織が海外の口座や暗号資産を使ったマネロンで収益を隠すケースも目立つ。
被告から徴収した追徴金については、その事件の被害者に分配する制度が設けられており、徴収が滞ると被害回復にも影響する。
追徴金制度に詳しい佐藤拓磨・慶応大教授(刑法)の話「犯罪組織の手元に収益が残ると、新たな犯罪に使われるリスクが高く、マネロンへの処罰を強化すべきだ。警察・検察が捜査の初期段階から柔軟に保全をかけられる仕組みのほか、金融機関との連携強化も有効だ」
◆追徴金=犯罪で不正に得た金品相当額を被告に納付させるため、刑事裁判の判決主文で懲役刑とともに言い渡される。刑事訴訟法に基づき検察が徴収し、国庫に入る。分納も可能。納付しないと労役場に留置される罰金刑と異なり、未納時の代替手段はない。
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