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料理はロジック、ご飯を炊くのはグラムで正確に……近年広がる一癖あるレシピ本

読売新聞 / 2025年1月13日 15時30分

『ロジカル男飯』の「『二郎系』ラーメン」

 台所に立ってご飯を作るのが苦手な人は、書店に行くことを勧めたい。調理の工程や味つけのこつを、明快な言葉で分かりやすく説明する料理本が最近、人気を集めているからだ。手に取れば、何でも麺つゆで味つけをするような生活から抜け出せるかもしれない。

「男飯」「ドヤ飯」本から学ぶ

 〈1〉「炭水化物+脂質+うま味」で構成された食べ物〈2〉一点突破の「過剰さ」〈3〉男女分け隔てなく万人に好まれる味――この三つの要件を満たすおいしい料理が、「男飯」である。

 明快な主張を掲げ、ラーメンや唐揚げなど、若い人や体力を使う仕事をする人向けのメニューを紹介するのが、樋口直哉『ロジカル男飯』(光文社新書)だ。

 この本の面白さは、「はじめに」を開くだけでも感じ取れる。料理のおいしさとは何か、なぜ人は味を感じるのかなど、食にまつわる根源的な問題が論理性を持った言葉で語られる。調理の過程も、一つずつ意味が解説されている。

 実は樋口さんは、服部栄養専門学校を卒業し、2005年に『さよならアメリカ』で純文学の名門、群像新人文学賞を受賞、芥川賞候補になった経歴を持つ。インターネット上で料理のことを書くうち、食関連の仕事が増えたという。

 「レシピ本は料理家やライター、カメラマン、編集者などが分業して作る世界だった。僕は自分でレシピを考え、文章を書いている。文章は編集者に学び、書く仕事を通して磨かれたと思う」と話す。

 哲学的にも見える自作の特徴について、「料理はどこで出来たか、誰が作ったかといった『物語』を食べている。料理の本は、味を伝えることはできない。メニューの背景にある物語をうまく伝えたい」と語る。

 「センスも、腕も、経験もいらないッ!! 料理は温度! 料理は科学!」

 本のカバーの文言が心強いのは、『COCOCORO大西哲也のドヤ飯』(大和書房)だ。著者は、動画投稿サイト「ユーチューブ」で調理の仕方を紹介し、人気を誇る。<分量、温度、時間を正確にはかることによって、味をコントロールすることができます>と訴える。ご飯を炊く際も計量カップは誤差が出るので、「500グラム」などと正確に量ることを提案する。

 目分量などのあいまいさがないのが魅力だ。編集担当者は、「コロナ禍で料理をする機会が増えた男性にも好評です」と説明する。

 「焼く」だけではなく、「ゆでる、蒸す、煮込む、揚げる」もフライパン一つでできる。今井真実『フライパンファンタジア』(家の光協会)は、調理器具をそろえることが面倒に感じる人には心強い一冊だ。気軽に挑戦できそうな「約5分カレー」といったメニューが並ぶのもうれしい。

だしに味の素 役立つ…作家・宮内悠介さん

 近年の「言葉のある」レシピ本の中で、とりわけ内容が話題を呼ぶのは、リュウジ『料理研究家のくせに「味の素」を使うのですか?』(河出新書)だ。本紙読書委員で作家の宮内悠介さんが魅力を語った。

 あるいっとき、卵かけごはんのだしで悩んでいた。鶏がらスープとかだと特有の味がついてしまい、理想から離れる。そのころ出会ったのが著者のレシピ。味の素を使えというのだ。やってみると、確かに余計な味がなくて理想に近い。いかにもな「味の素っぽさ」もない。要は使いかたであったのだ。そんな著者が味の素そのものについて、効果的な使いかたや安全性、歴史などを丸々一冊語ったのがこの本だ。例の卵かけごはんのレシピもある。

 この著者については、レシピ動画で知ったというかたが多いだろう。「料理は手間暇をかけるべし」みたいな呪いに苦しんでいたのが、この著者に救われ、楽しめるようになった人も多いのではないかと思う。実際は手間暇をかけてもいいし、楽をしてもいい。決まりはない。いずれにせよ味の素はけっこう役に立つ。

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