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[深層一直線]激動の世界情勢 ほぐす役割…右松健太

読売新聞 / 2025年1月6日 17時0分

安川純撮影

お笑い、スポーツ出番の時

 年末年始はテレビがにぎやかだった。普段テレビをつけると、仕事柄、報道番組にチャンネルを合わせてしまいがちなのだが、年末年始ばかりは、テレビの前で漫才コンビの話芸に腹を抱えて笑ったり、アスリートの躍動に手に汗握って応援したりして過ごすのが楽しかった。

 先月下旬、若手漫才師の日本一を決める「M―1グランプリ2024」が行われた。大会には過去最多の1万330組がエントリーしたという。馴染なじみの“出囃子でばやし”がかかり、万雷の拍手が迎えるなかを、1本のスタンドマイクめがけてステージに飛び込む。「出番」をつかんだ一握りの漫才師たちは、真正面にライトを浴びながら爆笑を誘う。その裏では、技術を磨き、時に辛酸をなめながら、想像を絶する努力を重ねてきただろうと、光を受けて背後に伸びた影に感じた。何かと気持ちも沈みがちな暗い世相にこそ、“お笑いの出番”だと思いたい。年忘れ、初笑い――。年末年始のいくつものお笑い番組に、心がほぐされた。

 正月の風物詩ともいえるスポーツイベントも目白押しだった。今月2、3日に行われた東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)では、沿道に詰めかけた多くの声援を追い風に、各チームが、仲間の汗が染みこんだタスキをフィニッシュまで運んだ。チームメートが勝利に向かって心を合わせ、また競技を戦った者同士が健闘をたたえあう姿も、分断が叫ばれる時代に、“スポーツの出番”だと意味を見いだしたくなる。そして、そのなかで「出番」を勝ち取りスタートラインに立った選手たちは、重圧の日々と、人知れぬトレーニングを乗り越えて、持てる力を発揮し、胸が震える感動を届けてくれた。

 今年はどんな1年になるだろうか。今月召集される通常国会で石破茂首相は、過去最大規模となる来年度予算案や、先の国会で結論が事実上先送りとなった企業・団体献金の扱いについて、少数与党として再び向き合う。円滑な国会運営のために譲歩を見せた臨時国会とは異なり、夏の参院選をにらんで与野党の駆け引きが一層強まり、「党利」ばかりを優先することにならないか。

 アメリカでは、今月20日、ドナルド・トランプ氏が再び大統領に就任する。トランプ氏は不法移民をめぐり「史上最大の強制送還」を行うと豪語し、米軍を動員する考えも示唆している。また、あらゆる国に対して関税を強化するとしている。アメリカの「実利」ばかりを追い求めて、対立が世界中に広がらないか。

 ウクライナでは、一方的に侵略したロシアを利するような和平交渉になってしまわないか。中国の習近平シージンピン国家主席は、過信と誤算に陥って台湾侵攻を決断してしまわないか――。分断や利己主義が跋扈ばっこし、不確実で先が見えない時代にあってこそ“ニュースの出番”でありたい。そして、私は、スタジオで「出番」を与えられたひとりとして、知識を深め、取材を尽くし、もつれた糸のように複雑な情勢を“ほぐす”役割でありたい。

(BS日テレ「深層NEWS」キャスター)

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