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袴田氏無罪検証 再審の制度改革に教訓生かせ

読売新聞 / 2025年1月7日 5時0分

 再審無罪の確定まで何十年もかかるような現行の法制度に、不備があることは明らかだ。裁判の長期化をいかに防ぐか、国は早急に議論を進めなければならない。

 1966年に静岡県で一家4人が殺害された強盗殺人事件で、死刑が確定した袴田巌さんの再審無罪を受けて、最高検と静岡県警が昨年末、捜査や公判の問題点をまとめた検証報告書を公表した。

 最高検の報告書は、当時の検察官の取り調べについて「袴田さんを犯人と決めつけたような発言で自白を求めた」と認定した。県警も、取り調べが連日12時間に及び、トイレにも行かせなかった点などを「不適正だった」とした。

 容疑者に自白を強要する取り調べは、過去のものではない。最近も、相手の人格をおとしめるような取調官の暴言が次々と明らかになっている。捜査を巡る長年の課題が解消されないことを、当局は重く受け止めねばならない。

 現在は一部に限られている取り調べの録音・録画(可視化)を拡充し、容疑者の弁護人も映像をチェックできるようにすべきだ。事件の参考人らに対する任意の事情聴取にも、積極的に可視化を取り入れていくことが欠かせない。

 再審の長期化を防ぐためには、検察側が保管している証拠を弁護側に開示するよう義務づける必要がある。袴田さんの再審では、無罪に結びつく重要な証拠が開示されるまで約30年かかった。

 証拠開示に消極的な検察の姿勢は、何度も問題になっている。

 福井市で1986年に起きた女子中学生殺害事件を巡り、殺人罪で服役した元被告の再審開始が昨年決まった。この事件でも、検察が重要な証拠を開示するまで約20年かかっている。

 どちらの事件も、証拠が早期に開示されていれば、再審の期間は短くて済んだはずだ。

 検察官は「公益の代表者」である。重要なのは事件の真相解明であって、容疑者をただ有罪にすればいいわけではない。そのことを改めて肝に銘じてほしい。

 裁判所の責任も重い。袴田さんの再審無罪を言い渡した裁判長は「長い時間がかかり、裁判所として申し訳ない」と謝罪した。

 再審の進め方に明確なルールはなく、基本的に裁判官に任されている。判断が難しい再審は、裁判官が積極的な訴訟指揮を行わず、審理が進まないケースもある。

 袴田さんは逮捕から無罪確定まで58年を要した。教訓を今後の刑事司法に生かすことが大切だ。

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