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自動で敵に機関銃の照準、「自律兵器」実戦に…AIによる「ロボットと無人機の戦い」が招く未来への警告

読売新聞 / 2025年1月12日 11時0分

ウクライナ企業デブドロイドが開発したAI兵器ウォーリー。実戦では上に機関銃を装着して使う(2024年12月18日、ウクライナ西部リビウ郊外で)=蒔田一彦撮影

[AI近未来 第1部]<5 最終回>

 ロシアの侵略を受けるウクライナの企業「デブドロイド」は2023年11月、AI(人工知能)が1キロ・メートル先の敵を認識し、自動で機関銃の照準を合わせる機能を備えた無人兵器「ウォーリー」を開発した。50台以上が前線に投入されているという。

 機関銃を発射するボタンは人間が押す仕様になっているが、ユリー・ポリツキー最高経営責任者(CEO)(30)は「技術者が1時間作業すれば、自動攻撃ができるようになる」と明らかにした。

 24年11月にウォーリーを車両に搭載した自走式の開発を終えた。現在は、車両の操縦から攻撃まで全てAIが行う完全自律型の実用化に向けた実験に取り組み、27年の配備を目指す。「これからの戦争は人間同士ではなく、ロボットと無人機の戦いになる」。ポリツキー氏は言い切った。

 24年12月、ロシアとの国境に近いウクライナ北東部ハルキウ州リプツィ村近郊で歩兵の姿がない攻撃があった。ウクライナ軍の報道官は、露軍部隊の陣地に地上攻撃を仕掛けたと地元メディアに明らかにした。

 投入されたのは機関銃付きの陸上無人車両(UGV)数十台や自爆型・偵察用無人機だ。「歩兵の代わりにロボット兵器のみを使った初の地上攻撃」(米政策研究機関・戦争研究所)とされる。AIが利用されたかは不明だが、今後はAIが戦場の無人化に拍車をかけ、攻撃への人間の関与が薄まっていく恐れがある。

 将来的に人類の知能をはるかに上回る「ASI(人工超知能)」が実現すれば、世界の安全保障のあり方はさらに一変しそうだ。

 かつてオープンAIで安全対策を担当したレオポルド・アッシェンブレナー氏は24年6月、AIに関する将来予測を発表した。「ASIは決定的な軍事的優位性をもたらし、おそらく核兵器に匹敵する。権威主義者はASIを世界征服や国内の完全な統制のために使うかもしれない」と警告した。具体例として、ネズミぐらいの大きさで大群となった自律型無人機が敵の核戦力を無力化できるようになると予測した。

 米国はAIの軍事利用でも中国と覇権を争い、AI大国の優位性を軍事面でも確保しようと企業との協力を急ぐ。防衛新興企業「アンドリル」は24年末、オープンAIとの提携を発表した。小型無人機を撃墜する技術開発を目指す。

 中国の習近平シージンピン政権は民間技術を吸い上げて軍事転用する「軍民融合」戦略で対抗する。開発競争が過熱する中、米国のバイデン大統領と習国家主席は24年11月、AIに核兵器使用の判断を委ねず、人間が管理するとの認識では一致した。ただ、トランプ次期大統領は対中強硬姿勢を示しており、AIの軍事利用でも対決色が強まる可能性がある。

 国連は、人間の関与なしにAIの判断で攻撃する「LAWSーズ(自律型致死兵器システム)」は非人道的だとして、開発や使用を禁止するよう求めている。ウクライナなどでAI兵器が使われ、LAWSの実用化が懸念されているためだが、議論は停滞している。

 米英などは国際規制の必要性を認める一方、当面は国内法に委ねるべきだと主張するのに対し、ロシアは規制に反対する。中国は拘束力のある枠組みを認めるものの、禁止対象の兵器を厳格に定義するよう求める。アントニオ・グテレス事務総長は26年までにLAWSを禁じる枠組みの創設を訴えるが、実現は困難だ。

 AIの技術革命は社会に新たな可能性をもたらす一方、人類がこのリスクとどう向き合い、AIをいかに管理していくかも問われている。本紙は今後も、AIの光と影を多角的に報じていく。

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