五輪ボイコット唱え選手の「人生奪った」カーター氏、バッハとコー2人の会長の「歩み」にも影響
読売新聞 / 2025年1月12日 10時0分
[地球遊泳]編集委員・結城和香子
米国のジミー・カーター元大統領が12月29日、100歳で死去した。1月9日の国葬を前に、米国のメディアでは評価が論じられていた。人権外交、平和主義の理想、退任後の長年の活動に対し授与されたノーベル平和賞――。でも、あの当時の多くの選手たちから見ると、彼は「我々の人生を奪った人間」(米国の元レスリング選手ジーン・ミルズ)だ。旧ソ連によるアフガニスタン侵攻に対し、1980年モスクワ五輪のボイコットを提唱したのがカーター氏だったからだ。
政治が引き起こした五輪史上最大の汚点。カーター氏の呼びかけに応じ、日本や西ドイツを含む西側の60か国以上がボイコットを決めた。84年ロサンゼルス五輪も、旧ソ連と東欧諸国による報復ボイコットで揺れた。「ボイコットは何も生まなかった。旧ソ連はさらに9年間アフガニスタンにとどまり続け、報復ボイコットを含めて世界中の選手たちがその夢を絶たれた」。西ドイツで選手代表としてボイコット反対の声を上げたトーマス・バッハ氏は、スポーツ界と選手の影響力の小ささを痛感したと語っていた。国際オリンピック委員会(IOC)会長職に至る、彼の道程の原点だ。
英国のように、政権の圧力と支援停止を受けながら、個人参加を守り通した五輪委もあった。当初ボイコット賛同一色だった世論は、セバスチャン・コー氏ら選手の訴えに徐々に理解を示し、高齢者が1ポンド紙幣を郵送してくれるなど、市井の募金が参加の背を押した。モスクワで獲得した金メダルは、現世界陸連会長のコー氏の礎となった。
生前カーター氏は「あれは難しい決断だった」と振り返ったという。任期終盤の国際政治の試練が、退任後の平和貢献の素地になったのだと思いたい。世界の選手たちの心の痛みに報いるためにも。
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