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合併で消えた幻の酒「いすゞ美人」、60年ぶり復活へ…残っていた「おけ」から酵母を採取

読売新聞 / 2025年1月9日 13時0分

蒸した瑞豊を移す蔵人ら(宮崎県延岡市の千徳酒造で)

 宮崎県美郷町の北郷地区で1968年に製造を終えた日本酒「いすゞ美人」を約60年ぶりに復活させるプロジェクトが3年目を迎えた。8日は酒の製造工程の一つである「酒母しゅぼ」づくりが延岡市で行われた。作業が順調に進めば、2月に製品が完成する予定だ。(尾谷謙一郎)

 町によると、いすゞ美人は同地区の「甲斐酒店」の前身の綿屋酒場で1930年に「いすゞ川」の銘柄で製造を開始。地元で親しまれてきたが、68年に大分県の酒造会社と合併したのを機に製造を終えた。

 当時の味や香りを知る人は少なく、「幻の酒」を新たな特産品につなげようと町や町商工会の渡会実・事務局長が復活を企画。県や宮崎大、JAなどを加えて2022年夏に復活委員会を発足させた。

 甲斐酒店の酒蔵に保存されていた帳簿などを参考に、今は栽培されていない酒米「瑞豊ずいほう」の栽培に取り組んだほか、酒蔵に残っていたおけやひしゃくから酵母を採取するなどした。

 酒のもとになる酒母づくりは、仕込み作業の中で重要な工程とされる。県内唯一の清酒メーカーの千徳酒造(延岡市)で行われた作業では、蒸した瑞豊に水やこうじなどが入ったタンクを蔵人が慎重にかき混ぜた。2月中旬に初搾りを行い、4合瓶で約1500本を製造し、2月20日から同町で行われる宇納間地蔵大祭で先行販売する予定。

 作業を見守った甲斐酒店の店主、甲斐文代さん(75)は「多くの人のおかげでここまで来ることができた。復活したお酒をまちおこしにつなげたい」と話した。

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