CES開幕、ホンダは次世代車で攻勢…独自OSとAIの融合で自動運転の高度化目指す
読売新聞 / 2025年1月9日 17時40分
【ラスベガス(米ネバダ州)=奈良橋大輔】世界最大級のテクノロジー展示会「CES」が7日、米ラスベガスで始まった。ホンダは、2026年から販売する新たな電気自動車(EV)の試作車を公開した。車の性能を制御する独自の基本ソフト(OS)と人工知能(AI)を組み合わせ、自動運転の高度化を目指す。次世代車の開発で先行する米中の新興勢への巻き返しを急ぐ考えだ。
今回公開した新型EV「0(ゼロ)シリーズ」は、スポーツ用多目的車(SUV)とセダンの2車種だ。北米から販売を始め、日欧への展開も予定する。最安価格は約470万円以下にする考えだ。
搭載する独自OSは「ASIMO(アシモ) OS」と名付けた。22年に引退した人型ロボット「アシモ」で培った認識技術を次世代車の開発で生かす。AIと組み合わせ、特定の条件下で人の監視がいらない自動運転「レベル3」の標準搭載につなげる。
高性能な半導体開発では、半導体大手ルネサスエレクトロニクスとの提携も発表。自動運転に欠かせない高い処理能力と省電力を両立させる。ソフト更新により性能向上などができる次世代車(SDV)では、米アマゾンのクラウド事業を手がけるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)と協業し、同社の生成AIを活用することも明らかにした。
ホンダが自動運転やSDVといった次世代車の開発を急ぐのは、米中の新興勢が急速に台頭し、競争が激化しているからだ。米テスラは、カメラとAIで自動運転が可能となる技術開発を加速。高価なセンサーなどが不要となり、競争力が強まる可能性がある。中国勢もこうした分野で、急激に追い上げを見せる。
カギになるのが半導体やソフト開発だ。今回のCESでは、トヨタ自動車が米半導体大手エヌビディアの先端半導体を採用することが明らかになった。自動運転技術の開発を加速させる。
電子情報技術産業協会によると、世界の生産台数に占めるSDVの比率は、25年の約3%から35年には約67%に高まると予測される。
もっとも、開発には巨額な費用が必要で、ホンダの場合は投資の効率化に向け、経営統合を協議する日産自動車とのOS共通化も課題となる。
ホンダでSDV開発を統括する四竈真人氏は7日、「経営統合の検討はSDVの協業も視野に入れており、OSも含む。集約が理にかなう」と述べた。
「アフィーラワン」は1400万円から…米オハイオ工場で生産へ
【ラスベガス=小林泰裕】ホンダとソニーグループの合弁会社「ソニー・ホンダモビリティ」の川西泉社長が7日、米西部ネバダ州ラスベガスで読売新聞などの取材に応じた。6日から米国で予約を開始した電気自動車(EV)「アフィーラ1(ワン)」について、ホンダの米オハイオ州の工場で生産することを明らかにし、「同じ工場で生産することでコストダウンを図りたい」と話した。
アフィーラワンの米国での価格は8万9900ドル(約1400万円)から。日本向けの価格は未定だが、2026年中の納車を予定する。オハイオ工場で生産したものを輸入することになるという。価格はテスラの人気スポーツ用多目的車(SUV)「モデルY」の約2倍だ。川西氏は「少しずつファンがついてくれたらいい」と話した。アフィーラワンには米オープンAIが開発した「チャットGPT」の技術を活用した対話型AI(人工知能)も搭載される。
パナソニック、アンソロピックと戦略提携
【ラスベガス(米ネバダ州)=坂下結子】パナソニックホールディングス(HD)の楠見雄規社長は7日に開幕したCESで基調講演し、生成AI(人工知能)を手がける米新興企業アンソロピックと戦略提携したと発表した。パナソニックHDが今年から米国で展開する予定の家庭向けAIエージェント(代理人)「Umi(ウミ)」など新たなサービスや製品に、アンソロピックの技術を活用する。
Umiには、アンソロピックの対話型AIを搭載する。旅行や食料品配達などの複数の企業のサービスと連携し、話しかけると旅先の提案や家族のスケジュール調整などをしてくれる。今後、日本での展開も視野に入れる。
楠見氏は、こうした新サービスの展開により、パナソニックHDの売上高全体に占めるAI関連事業の割合を、2035年までに現在の10%弱から30%まで高めるとの計画を示した。「(AI事業の強化に向けた)変革はパナソニックの全てを変えるだろう」と強調した。
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