1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

企業M&A、買収側が違約金の事例増える…日鉄とUSスチールの契約でも設定

読売新聞 / 2025年1月9日 5時0分

 企業の合併・買収(M&A)を巡り、取引が破談になった場合、買収する側の企業が売り手側に支払う違約金を契約に盛り込む事例が増えている。日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収計画では、日鉄がUSスチールに巨額の違約金を支払う義務が生じる可能性もある。買い手が支払う事例が続けば、企業の投資意欲が低下するとの懸念も出ている。

 他の買い手に都合良く乗り換えることなどを防ぐため、売り手側へ違約金を課すことは一般的だ。加えて、最近は買い手側にも違約金の支払いを求める例が増えている。資金的な問題や独占禁止当局の認可が下りずに不成立となる案件が増加したことが背景にある。買い手側が支払う違約金は取引額の1~5%で設定されることが多い。

 米投資銀行フーリハン・ローキーの調査では、主な米企業のM&Aで買い手側に対する違約金が設定された契約は、2017年の44%から、23年には62%にまで増加した。違約金の設定額も増えている。

 日鉄とUSスチールの契約では、破談になれば互いに違約金を支払う義務が生じる可能性がある。

 売り手のUSスチールは、別の買収提案に乗り換える場合などに、日鉄に5億6500万ドル(約890億円)を支払う。当局の許認可を取得できず買収が不成立となった場合などは、買い手の日鉄が同額をUSスチールに支払う。今年6月18日が契約上の期限だが、自動的に支払い義務が発生するわけではない。

 日鉄の橋本英二会長は7日の記者会見で、「買収が実現しないまま契約が切れれば違約金が発生するが、現時点で日鉄とUSスチールは『一枚岩』だ。この関係が続く限り、契約も切れない」と述べた。

 一方、買い手側が違約金を支払う事例は出ている。米インターネット通販大手アマゾン・ドット・コムは22年8月、ロボット掃除機「ルンバ」を生産する米アイロボットを17億ドルで買収すると公表したが、規制当局から承認を得られる見通しが立たず、9400万ドルの違約金を支払った。米ソフトウェア大手アドビも同業フィグマの買収を23年12月に断念し、10億ドルの違約金を支払った。

 M&A仲介大手・M&Aキャピタルパートナーズの辻井武弘氏は「各国で保護主義的な流れが広がっており、今後も買い手側に違約金を設定する動きは増えるだろう」と話す。一橋大の田村俊夫教授は「買い手側に高額に設定される傾向にあるのは、各国が安全保障上の懸念を理由に買収を認めない事例が増えているからだ」と指摘する。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください