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四冠と三冠の頂上決戦…一力遼棋聖×井山裕太王座、第49期棋聖戦七番勝負16日開幕

読売新聞 / 2025年1月9日 12時18分

4連覇を目指す一力遼棋聖

 囲碁界の最高位を争う第49期棋聖戦七番勝負(読売新聞社主催、特別協賛・サントリーホールディングス)は16日、東京都文京区の「ホテル椿山荘東京」で開幕する。昨年は世界戦を制し、4連覇を目指す一力遼棋聖(27)に、タイトル最多獲得記録を塗り替え、棋聖奪還を期する井山裕太王座(35)が挑む。七大タイトルのうち四冠を保持する棋聖と、三冠の挑戦者との頂上決戦だ。山下敬吾九段(46)に七番勝負を展望してもらった。(文化部 川村律文)

4連覇へ「楽しんで」戦う…一力遼棋聖

 昨秋は、応氏杯世界選手権で優勝し、名人を獲得しました。世界戦で優勝できたことは、自分にとって大きな自信になりました。名人戦七番勝負は、負けた対局で課題も見えましたが、今持っている自分の力は出し切れたと思います。

 名人戦七番勝負の前後に世界戦を打つという、経験したことがないスケジュールだったのですが、目の前の一着、一局に集中するというのはこれまで取り組んできたことでもあります。大一番が続くと勝つことも負けることもある。切り替えて次に向かうという面では、以前より進歩したと感じています。

 棋聖戦では、昨年に続いて井山さんとの七番勝負になりました。厳しい相手が上がってきたという印象です。棋聖リーグは苦戦していた印象でしたが、4勝1敗でまとめたのはさすがです。挑戦者決定三番勝負の対局も1局を通して局面をコントロールしていました。

 昨期の七番勝負は紙一重の内容でしたが、第6局で追いつかれても焦ることはありませんでした。第6局までずっと白番が勝つ展開でしたが、黒番でも大丈夫だと、自分を信じて打ちました。ここ数年は何度も七番勝負を経験して、準備なども自分のペースが出来上がりつつあります。井山さんとの対局だと、序盤からお互いに研究を外すこともよくあるので、その辺りも楽しんでいければと思います。

 応氏杯の優勝後は、取材対応やイベントなどで忙しくはなりましたが、囲碁界を盛り上げることは、なるべくやっていきたい。何度も経験してきていることなので、自分なりにうまく切り替えてやっていきたい。(河北新報社の)取締役になりましたが、仕事とのバランスの取り方も少しずつできてきました。タイムマネジメントに関しては意識しますし、勉強時間を増やすよりも、体調管理に重きを置いています。

 世界戦を制し、四冠になったことで、「恥ずかしい碁は打てない」「タイトルにふさわしい内容を見せたい」という気持ちがこれまで以上に強くなりました。今の自分のベストを見せたいと思います。

いちりき・りょう 1997年生まれ、宮城県出身。宋光復九段門下。2010年夏季入段。22年の第46期棋聖戦で棋聖を初めて奪取すると、昨期は井山裕太王座を4勝3敗で下して、3連覇を達成した。昨年9月には「応氏杯世界選手権」で、日本の棋士として19年ぶりの主要国際棋戦優勝を果たした。同10月には名人を初奪取し、天元、本因坊と併せて四冠となった。

2日制ならではの工夫を…井山裕太王座

 棋聖戦七番勝負という最高峰の舞台に戻ってこられて、非常にうれしい。ここに進むことは大きな目標でした。

 一力さんは棋士として脂が乗っていて、打ち盛りだと思います。昨年は応氏杯で優勝しました。今までなかなか勝てなかった世界戦で一つ結果を出して、充実しています。粘り強さも感じますし、一瞬の隙を逃さない強さがある。

 ただ、やるべきことができれば、チャンスは十分あると感じています。昨年の七番勝負は内容的にまずまずやれたとは思うのですが、勝負どころでミスが出た。そこの精度を上げていきたい。簡単に土俵を割らないことも必要になる。相手よりも、まずは自分ができる一番のパフォーマンスを目指したい。

 一力さんとの公式戦は、ちょっと間が空きました。お互い妥協するタイプではないので、どうしても激しい展開になることが多かったのですが、また違ったものを見せたい。これまでも序盤で様々なアイデアを試してきましたが、まだ碁にはいろんな可能性があると感じています。普段の対局とは異なり、2日制の長丁場だから試せることもある。そういう手を、一つでも多く表現したい。

 昨年は棋聖奪取こそなりませんでしたが、十段を獲得して、気持ちが少し楽になりました。世界戦でも手応えを感じる戦いができましたし、大きく調子を落とすことなく来られました。

 Sリーグでは2回戦の孫喆七段との対局を勝ちきれず、その後の2局もはっきり負けの場面があった。そこを乗り切れたのは、ツキがあったと感じます。挑戦者決定トーナメント決勝三番勝負での山下敬吾九段との碁も、自分なりにはまずまず打てました。

 年齢を重ねて、体調面を含めて気を使うことが増えました。よりいいコンディションで臨むために、運動を時々したり、睡眠を大事にしたりと、基本的なことに気をつけています。いい調子で開幕を迎えて、昨年以上のパフォーマンスを見せたい。今のありのままの自分を表現して、見どころのある戦いにしたいと思います。

いやま・ゆうた 1989年生まれ、大阪府出身。石井邦生九段門下。2002年入段。16年に囲碁界初の七冠を達成。一度は六冠に後退したが、17年に2度目の七冠を達成し、18年に国民栄誉賞を受けた。昨年は十段を奪取し、碁聖を防衛。12月に王座4連覇を果たし、タイトル獲得数を史上最多の77とした。七大タイトル獲得数の62も最多記録。棋聖位は第37期から9連覇を果たした。

終盤力の一力、シノギの井山…山下敬吾九段が展望

 今期の七番勝負は、お互いに負けられない戦いだと思います。一力さんは残るタイトルがあと三つ。井山さんをここで倒せば、七冠が見えてくる。井山さんも最近は七番勝負で勝てていない。一力さんに勝てないという印象が付きかねません。

 一力さんは本当に充実しています。応氏杯で勝ったことが大きい。世界でもある程度戦えるとは思っていたでしょうけど、試合で勝って結果が出て、やれるという自信を深めた。読みや形勢判断のスピードは速いですし、終盤の判断能力は日本では抜けているという印象も受けます。早碁から2日制まで、どんな持ち時間でも対応できる。疲れがたまっている点と、忙しくて研究の時間が取れないことは心配ですが、スケジュール管理はしっかりしているので大丈夫でしょう。

 井山さんはSリーグでも苦しみながら勝ち上がってきました。底力や勝負強さは維持していると思います。以前は序盤からしっかり時間を使っていましたが、布石をすごく研究していて、今は序盤は早く打って、後半に時間を取っておくというスタイルが確立している。井山さんといえども、35歳になって、以前よりは秒読みでの正確性に衰えが出てもおかしくない。そこに対しても準備をしていて、合理的ですね。

 この2人の対局だと、井山さんは序盤から地を稼いで、シノギ勝負になるような展開を目指すことが多い。一力さんの方がバランスを取っている印象を受けます。序盤はお互いに相当研究しているでしょう。持ち時間が長いと、流れを手放さずにコントロールしやすい。どちらがペースをつかむかというのが重要になる。あと、2人とも昨年は白番の方が勝率がいい。どちらが黒番で勝つのかも、ポイントだと思います。

やました・けいご 1978年生まれ、北海道出身。棋聖は4連覇を含め、通算5期獲得。通算タイトル獲得数は23に上る。今期の棋聖戦ではAリーグで優勝し、挑戦者決定トーナメントで2勝を挙げた。

七番勝負の日程

第1局 1月16、17日
 ホテル椿山荘東京(東京都文京区)
第2局 1月25、26日
 日光千姫物語(栃木県日光市)
第3局 2月5、6日
 宮城県知事公館(仙台市)
第4局 2月12、13日
 熱海後楽園ホテル(静岡県熱海市)
第5局 2月26、27日
 三日月シーパークホテル勝浦(千葉県勝浦市)
第6局 3月6、7日
 ホテル花月園(神奈川県箱根町)
第7局 3月12、13日
 常磐ホテル(甲府市)

挑戦者決定トーナメント、各リーグ戦の結果

Aリーグ
優勝 山下敬吾九段(昇級)
昇級 河野臨九段
残留 伊田篤史九段、広瀬優一七段
降級 林漢傑八段、富士田明彦七段、安達利昌七段、呉柏毅六段

Bリーグ
優勝 村川大介九段(昇級)
昇級 洪爽義五段、小山空也七段、本木克弥九段
残留 張栩九段、志田達哉八段、平田智也八段、大竹優七段、柳時熏九段、佐田篤史七段
降級 羽根直樹九段、鈴木伸二八段、蘇耀国九段、横塚力七段、張瑞傑六段、大西竜平七段

Cリーグ
優勝 酒井佑規六段(昇級)
昇級 小池芳弘七段、伊了四段、黄翊祖九段、瀬戸大樹八段、西健伸五段
残留 依田紀基九段、山田規三生九段、結城聡九段、鶴山淳志八段、六浦雄太八段、福岡航太朗七段、田中康湧五段、三浦太郎四段、今分太郎四段、表悠斗三段
降級 王銘琬九段、小県真樹九段、後藤俊午九段、溝上知親九段、張豊猷九段、三谷哲也八段、李沂修八段、村松大樹七段、沼舘沙輝哉七段、藤沢里菜女流本因坊、西岡正織五段、阿部良希五段、辻篤仁五段、星合志保四段、佐藤優太四段、小西理章三段

 挑戦者決定トーナメント、Sリーグ表などの肩書は、1月8日現在。

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