北九州の中3殺傷、平原容疑者は離婚後に「奇行」目立つように…証拠隠滅なく「衝動的な面も」
読売新聞 / 2025年1月10日 5時0分
北九州市小倉南区のファストフード店で昨年12月、中3男女が殺傷された事件で、福岡県警は9日、同区長尾の無職
「被害者にみじんも落ち度はない。2人は夢や希望を持った15歳。身勝手極まりない」。9日午後、県警小倉南署で行われた記者会見で、橋本浩輔・捜査1課長はこう強調した。
昨年12月の事件後、県警は生徒2人のスマートフォンの解析や関係者の聞き取りを進めたが、容疑者との面識は確認されなかった。ただ、平原容疑者は2人の入店とほぼ同時刻に駐車場に入っており、県警は2人を狙っていた可能性があるとみている。
知人らによると、元気な明るい性格で、まじめで成績も良かったという女子生徒。受験を控え、事件当日も勉強のために訪れた店で被害に遭った。
近くに住む30歳代女性は「将来のある子が狙われ、腹立たしい思いでいっぱい。なぜこんなことが起きてしまったのか、明らかにしてほしい」と話した。
事件の現場となった「マクドナルド322徳力店」は今月6日、約3週間ぶりに店内営業を再開し、9日も事件前のように利用客が訪れていた。
取材では、平原容疑者が周囲から孤立していた状況が明らかになった。関係者によると、実家はマンションや土地を所有する資産家だった。地元私立高に進学し、卒業後は周囲に「派遣の仕事をしている」などと話していた。
妻と娘の3人で暮らしていたが、約2年前に離婚。その後、爆竹を鳴らし、拡声機で「くらすぞ(殴るぞ)」と大声を出したり、軍歌を大音量で流したりする騒音トラブルを起こすなど「奇行」が目立つようになった。住民も恐れて距離を置き、近所付き合いはほとんどなかった。
ここ1、2年の変化を知る関係者は「完全に人が変わってしまった」と振り返る。自宅や車からは様々な種類のナイフや模造刀数十本が見つかっており、コレクターだったとみられる。
事件時の服装は黄色いサンダル履きの軽装で、事件後も同じ服装で買い物をして帰宅。衣服は自宅に残し、車内のナイフには血痕が付着したままだった。証拠を隠滅するような行動は確認されておらず、ある捜査関係者は「入念に計画された行動ではなく、衝動的な面もあるだろう」とみる。
早稲田大の石田光規教授(社会学)は、孤立を深めていた様子に着目。2019年の京都アニメーション放火殺人事件などを挙げ、「過去の重大事件では、離婚や失職などのつまずきで社会との接点を失って孤立し、『誰も理解してくれない』と世の中に対して募らせた不満が何かをきっかけに爆発するケースが目立つ。今回の事件の動機解明が待たれる」と指摘する。
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