セブン、アメリカで「食」の充実アピール…「コンビニ=給油」のイメージ覆せるか
読売新聞 / 2025年1月12日 11時45分
カナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールからの買収提案に揺れるセブン&アイ・ホールディングスは自力での企業価値向上を目指し、業績が低迷する米国事業のテコ入れを急ぐ。日本のノウハウを生かし、米国でも「食のセブン」をアピールするが、日米のコンビニ事情の違いが壁となっている。(金井智彦、写真も)
売り場3割拡張
テキサス州ダラス近郊で11月に開店したばかりの米セブン―イレブンの新型店は、従来より食品売り場を3割ほど拡張した。幅約3・5メートルの商品棚にサンドイッチやサラダがずらりと並ぶ。価格は5ドル(約780円)前後で、テキサス風味の味付けなど地域に応じた工夫もうかがえる。
セブン米国法人は日本の弁当会社とも協力し、米国内約30か所の工場で食品の開発、製造を行っている。ダグ・ローゼンクランズ最高執行責任者(COO)は「新鮮で付加価値が高い食品を毎日、製造、配送している。日本との重要な相乗効果だ」と強調する。
2024年3~11月期の米コンビニ事業の営業利益は前年同期より26%も落ち込んだ。インフレ(物価上昇)が影響し、主な顧客層である中・低所得者が買い控えを続けているためだ。
セブン米国法人は業績改善を目指し、食を重視した新型店を北米で約500店増やす計画だ。全米店舗数の4%にあたる。
GSに併設が8割
ただ、「食のセブン」が米国人に浸透しているとは言い難い。配車サービスの運転手アルファ・シセさん(32)は「給油のついでに飲み物を買うくらいしか使わない」と話す。
そもそも米国ではコンビニの8割がガソリンスタンド(GS)の併設店だ。都心部を除けば、コンビニは給油場所という意識が強く、日本のように弁当やおにぎりを日常的に購入する場所という感覚はない。実際、セブンやクシュタール傘下のサークルKも、ガソリンスタンドでの収益が6~7割を占める。
業界変革の「カギ」
他チェーンも「コンビニ=給油」という固定観念を変えようと動く。セブン米国法人が本社を構えるテキサス州で勢いがあるコンビニ「バッキーズ」の売りは「清潔さ」。「米国で一番トイレがきれい」とうたう。
店内の清掃を徹底し続け、「休憩するならバッキーズ」というイメージが定着した。長距離の車移動が多い米国ならではの戦略で、会社員のミーガン・モローさん(57)は「店内が明るく清潔で、安心感がある場所に入りたい」と話す。
かつて日本のコンビニも、中年男性が酒やたばこ、雑誌を買う場所というイメージが強かった。しかし食品を充実させることで、女性や高齢者、子供にも利用が広がり、社会インフラとして定着した。その変化をリードしたのは他ならぬセブンだった。
日米の小売業界に詳しいUBS証券の風早隆弘氏は「食の充実は米国コンビニの共通課題だ。消費マインドを変えるのは一筋縄ではいかないが、イメージアップがカギになる」と指摘する。米セブンが、米コンビニ業界を変革できるかどうかが問われる。
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