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首相アジア訪問 重層的協力で地域の発展図れ

読売新聞 / 2025年1月12日 5時0分

 国際情勢が流動化する中、日本がアジアの安定と繁栄に尽力する姿勢を示せたとすれば、意義は大きい。今後も重層的な協力を深めたい。

 石破首相がマレーシアとインドネシアを訪問した。

 マレーシアは今年、東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国を務める。インドネシアはASEAN最大の人口と経済規模を誇り、今後の成長が期待されている。

 首相は年明けに訪韓する予定だったが、韓国政界の混乱で断念した。突然の訪問先の変更だったが、アジアを選んだのは妥当だ。

 首相はインドネシアのプラボウォ大統領との会談で、行政官の育成を支援すると表明した。延べ約7200人が対象で、日本の企業や自治体などで受け入れる。

 インドネシアは民主的な統治が進んでいるが、いまだに汚職など腐敗が後を絶たないとされる。

 日本が行政官の育成に携わり、政治や経済システムの健全化に協力していくのは大事なことだ。こうした取り組みは知日派を増やすことにもつながり、望ましい。

 首相とプラボウォ氏はまた、外務・防衛閣僚会合(2プラス2)を年内に開くことや、艦艇の共同開発に向けて防衛当局間で協議を進めていく方針を確認した。

 インドネシアは、中国との関係を深めながらも、南シナ海の権益を巡っては対立している。日本とインドネシアで防衛協力を深めていくことは重要だ。

 また、首相はマレーシアのアンワル首相との会談で、岸田前政権が提唱した、アジアの脱炭素化の構想を進めることで合意した。

 この構想に基づいて既にマレーシアでは、日本企業が参画して、二酸化炭素を排出せずに水素を生産するプラントの建設計画が始まっている。日本が持つ優れた知見や技術をASEANの温暖化対策に生かしていきたい。

 近年、中国はASEANを経済面で支援し、影響力を強めている。ASEANの多くの国は、中国の覇権的な活動を批判しているが、決定的な対立は避けたいというのが本音だろう。

 日本が大上段に構えて法の支配の重要性など普遍的価値を唱えても、各国のそうしたスタンスを変えるのは容易ではあるまい。

 日本は長年、政府開発援助(ODA)を通じてASEAN各国を支援してきたが、近年は人材の供給源としてASEANを頼るようになった。日ASEANが対等な立場で協力を積み重ね、信頼を一層醸成していくことが大切だ。

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