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「きょうの魚は癖が悪い」…鹿島沖の漁船転覆、漁網内のイワシ「一斉移動」でバランス崩したか

読売新聞 / 2025年1月12日 9時15分

 鹿島港沖で6日未明に大津漁協(茨城県北茨城市)所属の巻き網漁船「第8大浜丸」(80トン)が転覆した事故で、漁網に入ったイワシの群れが船の下方へ一斉移動したため、網を取り付けた右舷側が引っ張られて傾き、網が破れる前に転覆した可能性があることが、周辺で操業していた漁船の乗組員らの証言でわかった。鹿島海上保安署は、船がバランスを崩して転覆したとみて詳しい状況を調べている。

 当時、周辺海域にはイワシの群れが集まり、他船団の数十隻も操業していた。他船(300トン)の漁労長は網を揚げる際、「群れが急に下へ押して(網が)重かった。きょうの魚は癖が悪い」と感じたという。実際、大浜丸の乗組員から「船の下に魚が入っていった」と聞いた関係者もいた。

 他船の乗組員によると、水温が低い時期は網の中をぐるぐる回っていたイワシの群れが、網を狭めるとともに下方へ動く傾向があるという。救助された乗組員は取材に「イワシが網に入った際、運搬船と網船(大浜丸)の距離が普段より狭かった」と話している。魚は刺激を受けると深部に逃げる習性があり、狭い網の中で一斉に海底に向かったことで船がバランスを崩した可能性がある。

 一方、多くの漁業者は、魚群の一斉降下が起きた場合、船体が傾いても重さに耐えられなくなった網が破れるとして「転覆はしないはず」と口をそろえる。今回の事故では大量のイワシが網を一気に下方へ押し込み、転覆を避ける対応が間に合わなかったとみられる。

 県旋網漁協によると、今季、北海道沖から千葉県沖では県内外の約30船団が操業している。300トンほどの漁船もある中、80トン型の巻き網漁船は大浜丸のみで最小だった。小さい船は傾きやすいという。

 過去には同様の事故も起きている。2014年には、島根県浜田市沖の日本海で巻き網漁船(乗組員20人、135トン)が転覆し、沈没。国土交通省の報告書によると、網に入った大量のサバが一斉に海底方向に泳いだことなどが原因だった。

 海難事故に詳しい東海大海洋学部の山田吉彦教授は、今回の事故について「取れすぎたイワシが密集したことに加え、海流が想定外に速かったことで、漁船により力が加わったことも考えられる」と指摘した。

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