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千葉県が導入目指す宿泊税に現場から異論…TDR抱える浦安市「狙い撃ちだ」、民宿「定額制だと割高」

読売新聞 / 2025年1月12日 17時13分

 千葉県が導入を目指す宿泊税の制度設計を巡り、複数市の関係者から意見や要望が相次いでいる。一律で定額150円とした税額設定が、地域の実態にそぐわないとの見方があるためだ。県は今後、市町村や宿泊事業者などの意向を踏まえ詳細を詰める方針で、広く理解の得られる制度を構築できるかが焦点となる。

■修学旅行は免除を

 先月13日、千葉市内で開かれた宿泊税に関する議員勉強会。県とは別に市独自で宿泊税の導入を検討する千葉、浦安、成田の3市の議員約20人が集まり、各地の課題を共有した。

 「『千葉モデル』がいきなり出てきた時は衝撃だった。浦安は取られるだけ取られて、市としての使い道がない中で決められた」。柳毅一郎・浦安市議は、県の目指す宿泊税のあり方に疑問を呈した。

 千葉モデルとは、県が導入を目指す宿泊税の仕組みだ。県の有識者会議が昨年10月に報告書で示し、県は事業者への説明会などでおおむね同意が得られたとして、導入の方針を決めた。

 千葉モデルでは、県が1人1泊あたり150円の宿泊税を徴収し、市町村が課税する場合は上乗せをする。コロナ禍で深刻化した観光業界の人手不足に関する対策や、インバウンド(訪日外国人)を増やす手立ての推進などの財源として、県課税分だけで年間40億円余りの税収を見込んでいる。

 県は税収の4分の1程度を、市町村や観光地域づくり法人(DMO)の支援に充てる方向だ。しかし、具体的な配分方法ははっきりしておらず、浦安市の関係者は「浦安の稼ぎが狙い撃ちにされている」と不満を漏らす。

 浦安市は東京ディズニーリゾート(TDR)を抱え、宿泊者数は県全体の約4割を占める。県課税分で多くの税収を県に持っていかれるのに、県からの還元は十分に得られないのではないか――。こうした懸念が広がっている。

 簡素な制度設計を重視し、修学旅行生を課税対象に含んだことも波紋を呼んでいる。内田悦嗣市長は「修学旅行での100円、200円は非常に大きい」と述べ、修学旅行は課税を免除すべきだとの考えを強調する。

■「小さい施設は苦しむ」

 民宿の多い南房総市は、別の問題に直面している。市観光協会に加盟する約120の宿泊施設のうち、民宿は約6割に上る。学生サークルの合宿や工事関係者の滞在などで利用されている。

 「民宿はかなり値段がシビアだ。税を肩代わりする民宿も出てくるのではないか」。こう指摘するのは、千倉町民宿組合(南房総市)の堀江洋一組合長だ。市内には1泊3000円程度で宿泊できる民宿があり、2か月ほどの長期で滞在する人もいるという。一律定額制の宿泊税が連日かかれば、宿泊者にとっては大きな負担だ。宿泊料金が安いだけに、150円の課税額に対する割高感も大きくなる。

 県の制度案では、連泊に対する課税免除や、宿泊料金が一定額を下回る場合に課税しない仕組みは見送られた。堀江さんは「最終的に苦しんだり、混乱したりするのは小さい宿泊施設だ。県はもう少し現場を見てほしい」と訴える。

 南房総市や館山市、銚子市など6市町の民宿組合は先月4日、県にさらなる説明などを求める要望書を提出した。堀江さんは今後、県全域の民宿組合を再結成し、改めて意見を伝えていく考えだ。

■高額化に懸念

 千葉市議会でも先月13日、県の宿泊税導入に慎重な検討を求める意見書を全会一致で可決した。全国的に宿泊税の目安を200円とする自治体が多い中、県課税分の150円に上乗せする形で市町村が50円以上を課税すれば、宿泊費が県外に比べて高額になるとの懸念を示している。

 千葉市では昨年11月に検討会議を設置し、独自の宿泊税導入について議論を進めてきた。ある千葉市議は、神谷俊一市長が前任の市長だった熊谷知事に意見を述べにくいとみており、「神谷さんが言えない分を議会がサポートしないといけない」と語る。

 県は、持続可能な観光地づくりなどに必要な財源を確保するため、150円の税額設定は動かさない考えを強調している。一方で制度の詳細について調整する可能性には含みを持たせており、熊谷知事は「これから意見交換をしていく中で、それぞれの市町村や、宿泊事業者の声を丁寧に聞きながら、制度設計を詰めていきたい」と話している。

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