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缶コーヒー・回転すし・ファミレスを生んだ万博…今回は、どんな食文化が生まれるだろうか

読売新聞 / 2025年1月13日 5時0分

 大阪・関西万博の開幕まで100日を切った。1970年大阪万博では、今では当たり前となった数々の商品やサービスが生まれた。缶コーヒーもその一つ。喫茶店でしか味わえない時代に「いつでもどこでも楽しめる」というコーヒー文化の未来の姿を示したことで一気に普及した。今の言葉で言うなら、インターネットなどで注目を集める「バズる」状態となった。

「いつでもどこでも」UCC創業者開発

 万博会場となる大阪市の人工島・夢洲ゆめしまでは、4月13日の開幕に向けた準備が急ピッチで進む。会場には空飛ぶクルマや曲がる太陽電池、iPS細胞から作った「動く心臓」などが展示される。「未来社会の実験場」のテーマに沿う形で、医療や暮らしの未来が示される。

 70年万博では、携帯電話や電気自動車などの新技術がお披露目された。フライドチキンやフランスパンなど、日本になじみのない食文化も紹介された。缶コーヒーは、万博を機に広まった食文化の代表格と言える。

 開発したのは、UCCグループ(神戸市)創業者で、コーヒー豆の卸事業を手がけていた上島忠雄氏。ある日、駅で瓶入りコーヒー牛乳を買ったが、乗車する電車の発車ベルが鳴った。瓶は売店に返す決まりで、飲み切ることができなかった。「いつでもどこでも誰もが気軽に飲めるコーヒーを作れないか」と万博前年の69年「UCCコーヒーミルク入り」を生み出した。

「邪道」一転、飲む映像で注文殺到

 発売当初、業界からは「こんな商品は邪道」と見向きもされなかった。窮した上島氏らが目を付けたのが万博だった。

 炎天下、長蛇の列で手にした冷たい缶コーヒー。来場者は地元に帰り、生まれて初めての食体験を“拡散”させた。

 決定打は、テレビ中継だった。「冷えた缶コーヒーをおいしそうに飲む映像が映った。食べ歩きは行儀が悪いというのが常識で、消費者にも良い意味の驚きがあったのだろう。翌朝から注文の電話が鳴り響いたそうだ」と、UCCコーヒー博物館の栄秀文館長(63)は明かす。

 見慣れない映像、口コミによる拡散……。ネットやSNSの「バズり」のパターンを先取りしたかのようにみえる。

 万博は1851年ロンドンで初開催された。蒸気機関車からミシンまで10万点もの最新技術が展示され、約600万人が未来の暮らしに胸を躍らせたという。以降、万博は100万人台~7000万人台を動員し続けた。

 万博の歴史に詳しい立命館大の飯田豊教授(45)は、「万博は映画もテレビもない時代に様々な物事を知ることができる装置だった。70年万博はテレビと万博が共振することで、様々な製品が普及する役割を果たした」とみる。バズりを仕掛ける巨大装置だったと言えそうだ。

消費量は曲がり角

 高度成長期で労働時間が増大する中、ちょっとした気晴らしに、眠気覚ましにと、労働者のニーズを先取りすることで市場を席巻した缶コーヒーも、今曲がり角にある。全日本コーヒー協会によると、2023年の缶入りコーヒー飲料の消費量は約120万キロ・リットルと、この30年間でほぼ半減した。

 コンビニ各社が12年頃からレジカウンターで1杯100円程度で入れたてのコーヒーの提供を始めた。健康志向の高まりや禁煙政策の強化で「缶コーヒー片手に一服」という休憩スタイルも廃れた。17年にはペットボトルコーヒーがヒット。その消費量は缶コーヒーを超えた。

 見方を変えれば、缶コーヒーによって開拓された「手軽に飲める」文化が、姿を変えて継承されたと言えないか。

 ファミレスや回転すしも70年万博から広まり、今なお愛される。55年後の万博からどんな食文化が生まれるか期待したい。

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