二十歳の集い「２年前より大人の階段」…三重・伊賀市は「１８歳成人式」中止

タイムカプセルを開封して旧交を温める若者たち（１２日、三重県伊賀市島ヶ原で）

　成人の日（１３日）を前に、三重県内各地で１２日、二十歳の集いが開かれた。出席した若者たちは、社会に出て活躍したいとの思いや、これまで育ててくれた両親への感謝などを語った。一方、同県伊賀市では２０２３～２４年に開催された「１８歳成人式」が、今年は中止となった。民法改正で成人年齢が１８歳に引き下げられて以降、式典の対象者を何歳とするかの議論が続いている。

　「一昨年に１８歳の成人式をしたが、やっぱり２０歳のお祝いができてうれしい」

　伊賀市の島ヶ原会館で開かれた「島ヶ原地区２０歳の集い」に出席した若者は、そう話した。

　地区内で今年４月１日までに２０歳となる１９人のうち、１４人が出席。小学校卒業時に校庭に埋めたタイムカプセルを開封し、「２０歳の自分」に宛てた手紙などを取り出した。

　伊賀市出身の男性（２０）が昨年１２月、「みんなで集まってタイムカプセルを開けよう」と島ヶ原小・中学校の同級生に呼びかけた。同市が２３年５月に開いた初の「１８歳成人式」では副実行委員長を務めた。

　この日の集いで、男性は「２年前より、大人の階段を上った。島ヶ原で育ったことへの感謝と誇りを忘れず、社会に貢献できる大人になりたい」と語った。

市長交代で変更

　成人年齢を１８歳に引き下げる民法改正は２０１８年に成立した。伊賀市では１９年、当時の岡本栄市長が「社会として１８歳を成人として取り扱うことを確認する場でなくてはならない」として、成人式の対象を１８歳とする方針を表明。２３年から１８歳対象の成人式を５月の大型連休に開いてきた。

　ところが、２４年１１月の伊賀市長選で、岡本氏は落選し、１８歳成人式の中止を主張する元県議の稲森稔尚氏が当選した。

　島ヶ原地区の集いに出席した稲森市長は「反対署名を無視して１８歳成人式が強行された。改めるべきは改め、若者や市民の声を大切にしていきたい」とあいさつした。

実行委に戸惑いも

　伊賀市内の高校生らの間では、式典の対象年齢を２０歳に戻したことについて、おおむね好意的な意見がみられる。

　高校３年の生徒（１８）は「地元を離れたり、社会に出たり、大人の大変さを経験してからの方が、みんなと再会した時の喜びは大きい」、別の生徒（１８）は「酒やたばこなどの制限が全てなくなる２０歳で式に出た方が、大人になったと実感できる」と話す。

　一方、今年５月に予定されていた「１８歳成人式」実行委員会の委員を務める高校生たちからは困惑の声も上がっている。生徒の一人は「１８歳で成人式をやるものと思ってきたので、急に変更され、戸惑っている」と漏らした。

　稲森市長は当初、今年の１８歳成人式のために着物レンタルを予約した市民に対し、キャンセル料を補償するよう検討していた。だが、公平性などの観点から、市は補償を行わない方針に転じたという。

１８歳で式典、全国でも少数

　「１８歳成人式」を開催する自治体は、全国でも極めて少ない。

　大分県国東市は２０２３年５月、１８歳を対象にした成人式を開いた。だが、出席者などに実施したアンケートで反対意見が多かったため、その後、対象者を２０歳に戻した。

　北海道別海町は２２年から段階的に成人式の対象年齢を１８歳に引き下げる方針を示していたが、町が実施したアンケートで反対が８割を占め、中止となった。

　一方、２２年から１８歳となる年の８月に「成人証書授与式」を開催している宮崎県美郷町は、今後も続ける方針だ。町教育委員会によると、参加者や保護者から「成人になる自覚を早くから持てる」と好評で、反対意見は少ないという。担当者は「参加者が約２０人と少なく、（１８歳成人式をやめた自治体とは）成人式の持つ役割が異なるのかもしれない」と話す。美郷町教委によると、今年、１８歳成人式を開催するのは全国で美郷町のみという。

　成人式のあり方に詳しい国学院大の野村一夫教授（社会学）は「成人になった自覚を促す目的で『１８歳成人式』を開催する意義はあるが、（進学や就職の時期と重なって）参加しにくい人もいる。参加のしやすさを考え、対象を２０歳に戻す自治体が出てきたのではないか」と指摘している。