「家計にゆとりない」6割超、高年収ほど「ゆとり」減少の実態 「家計見直しの極意はマストとウォント」と専門家
J-CASTニュース / 2025年1月14日 18時42分
家計にゆとりはあるか?(写真はイメージ)
あなたの家計、ゆとりありますか?
コロナ禍の2021年に比べ、家計にゆとりにない人が増えていることが働く主婦・主夫層のホンネ調査機関「しゅふJOB総研」(東京都新宿区)が2024年12月17日に発表した意識調査「世帯年収とゆとり」でわかった。しかも、年収が高い層ほど「家計のゆとり」がなくなっている。
しかし、収入を増やさなくても、ゆとりを取り戻す方法があるという。専門家に聞いた。
年収高い層ほど多い、3年前より「家計のゆとり」が減少
しゅふJOB総研の調査(2024年7月25日~8月1日)は、就労志向のある主婦・主夫層420人が対象。
いま、家計にゆとりがあるかを聞くと、「ある」(27.1%)と答えた人が3割以下、「ない」(65.5%)と答えた人6割超だった【図表1】。
家計のゆとりを世帯年収別に比較すると、年収500万円未満では「ある」(11.5%)が約1割だが、年収500万円以上では「ある」(35.3%)が3倍以上の3割超だった【図表2】。
興味深いことに、2021年と2024年とを比較すると、「ある」と答えた人が年収500万円未満では12.3%から11.5%へと微減だったのに対し、年収500万円以上では、47.5%から35.3%へと12ポイント以上も減少しているのだ【図表3】と【図表4】。年収が多い層のほうが「ゆとりがない」と答える人が多くなっているは、どういうわけだろうか。
【図表5】は、子どもの数と年収を比較したグラフ。年収500万円未満では6割以上に子どもがいなくて、年収が高くなるほど子どもの数が多くなることがわかる。
「身の丈にあった生活をしている」や「数年先の年金生活が心配」の声
フリーコメントでは、家計にゆとりがある人からこんな意見が相次いだ。
「普段、節約を心掛けているので、金銭的には余裕があると思う 身の丈にあった生活をしている」(50代:今は働いていない)
「どれか1つが負担になっているのではなく、全体的に圧迫されてきている感じがする」(40代:パート/アルバイト)
「今現在ゆとりがあっても、子どもたちの大学進学や、夫婦の老後の費用を考えると貯蓄せざるをえない」(40代:今は働いていない)
「細かい家計簿もつけておらず、それでも必要なものは購入し、外食やデリバリーも利用して少し料理の負担を減らしたり、旅行も年に数回出かけたり......。そう思うとゆとりは比較的あるのかなとは思います」(50代:契約社員)
ゆとりがあると言いつつ、つましい生活ぶりの人が目立った。一方、ゆとりがないという人からは切実な声が寄せられた。
「食料品が安ければ、健康を十分保てる量の食事をとれる。また、音楽やスポーツなどを楽しむ余裕もできる。今は、可能なものを省く生活で、心にも余裕がない」(50代:今は働いていない)
「ゆとりがあればすかさず老後資金へ。ゆとりがないのが本音」(40代:今は働いていない)
「目の前に定年が迫っている年齢。現在のゆとりどころか、数年先の年金生活が心配」(50代:今は働いていない)
「給料は上がらず、物価だけはどんどん上がり、夢がない現実」(30代:今は働いていない)
「子どもがいなければ楽なのにと思うことが多い。昔と違って育てにくい世の中なので」(50代:契約社員)
世帯年収が低い層は、もう家計のやりくりが限界
J-CASTニュースBiz編集部は、研究顧問として同調査を行い、雇用労働問題に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに話を聞いた。
――2021年より「家計にゆとりがある」層が減っていますね。2024年は2021年より賃金が上昇しているはずなのに、それ以上に物価高が激しいのでしょうか。2021年はコロナ禍だったので何かと大変でしたが、逆に外出などで金を使わなかったことも影響しているのでしょうか。
川上敬太郎さん コロナ禍の真っただ中では出歩くことが少なくなり出費が減った面もありましたが、その裏で物価上昇はずっと継続してきています。一方で、賃金も上昇傾向にあったものの、物価高の勢いに追いついておらず、実質賃金は下回る状況が続いてしまっていました。
また、賃上げに積極的な職場とそうでない職場とがあり、賃金上昇の恩恵を感じられた人とそうでない人が二分された面もあるように感じます。
――「家計のゆとり」を年収別に2021年と2024年を比較した結果が不思議です。500万円未満より500万円以上のほうが、「ゆとりがある」と答えた人が大幅に減ったのはなぜでしょうか。
川上敬太郎さん 世帯年収が多いほど「ゆとりがある」と感じている人の比率が高い傾向にあることは、2024年も2021年も同様です。しかし、世帯年収が比較的少ない層は2021年の時点で「ゆとりがない」と感じていた人が8割を超える水準に到達していました。既に大半の人が厳しい家計状況におかれてしまっていたことになります。
その状況が、世帯年収が比較的多い層にも広がりつつあるということだと感じます。継続的な物価高に対して収入が変わらない、あるいは収入増が追いつかないままだと、これまでは家計にゆとりを感じられた層であったとしても厳しい状況へと追い込まれざるを得ません。
家計のゆとりは、それぞれの「身の丈感」によって違う
――つまり、年収が低い層はすでに限界に達していて、そこに年収が高い層も近づいたというわけですね。
ところで、「家計のゆとり」を子どもの数で比較したグラフも興味深いです。子どもの数が多いほどゆとりがあるのは、なぜでしょうか。大昔は「貧乏人の子沢山」という言葉がありましたが、現在は子育てに大変なお金がかかるため、子どもの数が少ないほうがゆとりにつながる気がします。
川上敬太郎さん 基本的に、家計にゆとりを感じられるかどうかは世帯年収の多さとの関連性が強いように感じます。一方で、お子さんが多いほど食費や日用品などの生活費はもちろん、教育費用など何かと出費が増えます。
そのため、出費面だけを考えると、お子さんが多いほうが家計は厳しくなりますが、お子さんが多いほど相応の収入が必要となるため、結果としてお子さんの数と世帯年収の多さとが比例する傾向が見られるのかもしれません。
世帯年収とお子さんとの関係性には大きく2つの側面があると思います。1つは、世帯年収が多い方がお子さんをもうけやすい側面、もう1つはお子さんを授かったことで必要が生じて、より収入の高い仕事に就いたり、パートの時間を延ばしたりして世帯年収を増やすことになる側面です。
――なるほど。コメント欄では切実な意見が多く出ています。私は「どれか1つが負担になっているのではなく、全体的に圧迫されてきている」という意見が自分にピッタリでしたが、川上さんはどれが響きましたか。
川上敬太郎さん 「普段、節約を心掛けているので、金銭的には余裕があると思う。身の丈にあった生活をしている」というコメントです。この「身の丈にあう」という感覚は、ご家庭ごとに異なる点に注意が必要だと感じました。
旅行ひとつとっても、年に一度は海外旅行に行けるくらいが「身の丈」だと感じている人もいれば、数年に一度でも近場の国内旅行に行けるならば充分という人もいます。
また、周囲の方々とのお付き合いでお中元やお歳暮などのやりとりを頻繁に行う人もいれば、ファッションや食べ歩きが生きがいの人など、生活していく上で必要最低限の出費ラインをどこに引くかは、人それぞれです。身の丈感が人によって違えば、必要となる収入も異なってくるのだと思います。
そのため、家計にゆとりを感じるかどうかは一概に収入の多寡だけで決まるものではなく、人々の身の丈感によって大きく左右される面があるのではないでしょうか。
いまの支出をMUST(必須)とWANT(願望)に分けてみよう
――川上さんはズバリ、家計にゆとりが生まれるようにするには、個人でできることでは何が大切と思いますか。また、手取りアップのために政治に何を一番期待しますか。
川上敬太郎さん 家計にゆとりができるようにするには、収入を増やすのが最も確実な方法ですが、そう簡単に増やせるものでもありません。家計のゆとりというより、生活のやりくりがかなりひっ迫している状況を踏まえると、政府に期待されるのは各家庭で生活に使えるお金を増やすための施策です。
過度な物価高を抑えるとともに「103万円の壁」を見直して実質所得の目減りを防ぐなど、手取りを増やす取り組みの重要性は増していると感じます。
一方で、各ご家庭でできる確実な施策としては支出を減らす節約だと思いますが、「もう削れるところなんてない」という悲鳴にも似た声も耳にします。その上で、敢えて家計を見直す余地があるのかどうかを確認するとしたら、いまの支出をMUST(必須)とWANT(願望)に分けてみることかもしれません。
――MUSTとWANTとはどういうことですか。
川上敬太郎さん それ以上削りようがないMUST支出に対し、WANT支出と言えるものがどれくらいあるのか。身の丈感は人それぞれ異なりますし、WANT支出は贅沢だからとすべてやめると、心の豊かさまで削られてしまうことになりかねません。
そのため、決してWANT支出をゼロにすることを勧めるわけではありませんが、何がWANT支出に該当するかを把握しておけば、工夫や改善の余地が潜む場所を見いだしやすくなると思います。
――WANT支出をリストアップするといいかもしれませんね。今回の調査で、特に強調しておきたいことがありますか。
川上敬太郎さん この3年の変化を見ると、家計のゆとりは厳しくなっていますが、最低賃金やベースアップといった賃上げ施策も進められています。実質賃金も少しずつ上昇傾向です。決して未来が暗いばかりとは限りません。
ただ、世帯年収が比較的多い層もゆとりを感じづらくなっている状況を踏まえると、家計の厳しさはギリギリまできており、多くのご家庭がやりくりに疲弊しています。一日も早く、実質賃金が安定的に継続して上回る状態が実現することを願います。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
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