「前腕の力はメジャートップ級」な阪神投手の自主トレに密着…最新機器であらゆる動作を数値化
読売新聞 / 2025年1月15日 15時58分
近年、トレーニングに科学的な手法を取り入れ、レベルアップを図るプロ野球選手が増えている。阪神のブルペンを支える右腕・石井大智(27)もその一人。このオフの自主トレに同行し、現場を取材した。(細田一歩)
石井が訪れたのが、東京都中央区の施設「ディメンショニング・スポーツセンター」(北川雄介代表)。投球の球速や回転数などが測定できる「ラプソード」をはじめ、最新機器がそろう。千葉県四街道市、大阪市内を合わせて全国に3施設あり、プロアマを含め、年間延べ約4000人が利用しているという。
石井が主に利用したのが、地面に加えた力などを測定できる「フォースプレート」という機材だ。うつぶせになり、右腕で床に設置されたプレートを押す力を測定。腕を頭上、斜め上、真横に伸ばした状態から押した結果、頭上に伸ばしたときの数値がずば抜けて高く、259ニュートンを記録した。
投球フォーム、本人にピッタリ
スタッフの酒井竜矢さん(32)は「250を超えると、米大リーグでもトップ級」と評価。150キロ台の速球が持ち味の石井は、真上から投げ下ろすフォームが特徴的だ。高い出力を発揮するうえで、今の投げ方が理にかなっていることが裏付けられた。
一方、不足していたのは左の脚力。投球の際、踏み込む力が強いと、「車で急ブレーキをかけた時、体が前に突っ込む感覚」(酒井さん)が得られ、腕の振りが加速しやすい。しかし、実際の投球練習で、プレートを踏む力を測定したところ、石井の数値は724・2ニュートンで、同程度の球速の投手に比べて見劣りした。「1000ニュートンはほしい」と酒井さん。左足ジャンプも、右足より約4センチ低かった。
課題を数値で実感、克服すれば160キロも
石井は昨季、56試合に登板し、防御率1・48の好成績を残した。ただ、以前から右前腕に強さを感じる一方で、「左半身に弱さがある」との自覚があったといい、今回の測定で長所と課題が明確に把握できた。「数字で言われると説得力がある。もっとやらなきゃと、ひしひしと感じた」と収穫を得た様子だった。
裏を返せば、まだ球速を向上させる余地が残っていると言え、打撃の際に左足が軸となるキックボクシングを取り入れることで脚力強化を図る考えを示した。酒井さんも「(トレーニング次第で)160キロも夢ではない」と期待を込めた。
北川代表によると、あらゆる動作を数値化することで指導の効率は格段に上がるといい、「選手の時間は有限。試行錯誤を有意義なものにするためにも、数値の測定は重要」と強調する。
近年ではプロ野球選手だけでなく、チーム単位で指導を受けにくる高校野球の強豪もある。指導者間でも科学的なアプローチに対する理解が深まっており、北川代表は「野球界全体で連携しながら、レベルが上がっているのが今の状況ではないか」との見方を示した。
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