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芥川賞は島田雅彦選考委員「最も過剰な2作」、直木賞の伊与原さんは「諦めず書き続けてよかった」

読売新聞 / 2025年1月15日 21時0分

第172回芥川賞の受賞が決まった(右から)安堂ホセさん、鈴木結生さん、直木賞の受賞が決まった伊与原新さん(15日、東京都千代田区で)=若杉和希撮影

 第172回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が15日、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞は安堂ホセさん(30)の「DTOPIAデートピア」(文芸秋季号)と鈴木結生ゆういさん(23)の「ゲーテはすべてを言った」(小説トリッパー秋季号)に、直木賞は伊与原新さん(52)の「藍を継ぐ海」(新潮社)に決まった。副賞各100万円。贈呈式は2月下旬に東京都内で行われる。

 芥川賞の安堂さんは東京都生まれ。「ジャクソンひとり」で2022年に文芸賞を受賞し、デビュー。今回、3度目の候補で賞に輝いた。受賞作は、近年人気の「リアリティーショー」が題材。10人の男性が南の島で1人の女性をめぐって争い、欲望や暴力が増殖する世界を描いた。

 鈴木さんは福島県出身。西南学院大在学中に「人にはどれほどの本がいるか」で林芙美子文学賞佳作を受賞し、デビュー。初の候補で賞を射止めた。受賞作は、ゲーテ研究の第一人者である大学教授が、自分の知らない「ゲーテの名言」を目にし、原典を探る物語。文学や人生とは何かを問う。

 島田雅彦選考委員は「(テーマと内容という点で)最も過剰な2作の受賞となった」と述べた。

 直木賞の伊与原さんは大阪府生まれ。東京大大学院で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了後は富山大で地磁気を研究していた。10年に「お台場アイランドベイビー」で横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。今回、2度目の直木賞候補だった。

 受賞作は、人間ドラマと自然科学の神秘が織りなす短編集。生物学や天文学などの要素をちりばめながら、人生に戸惑う人が新たな一歩を踏み出すまでを温かな筆致で描いた。角田光代選考委員は「土地のことをよく調べ、そこに暮らす人の姿を丁寧に描いている。自然科学の要素が入るのが特色だが、単なる科学ネタになっていない」と評した。

 記者会見に登場した伊与原さんは「くすぶっていた地球科学研究者だった自分が、ひょんなことから小説を書き始め、気がつけばこんなところまで来てしまった」と語り、「何度ももう無理かと思ったが、諦めずに書き続けてきてよかった」と喜んだ。

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