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インバウンド消費8兆円突破、自動車「輸出額」に次ぐ規模に…ホテル・空港など受け入れ態勢に課題も

読売新聞 / 2025年1月16日 9時15分

 2024年の訪日外国人客数は過去最多を更新し、消費額は初めて8兆円を突破した。ホテルなどの宿泊や小売り、飲食など幅広い業種が訪日客消費の恩恵を受けており、日本経済における訪日客消費の存在感は増している。政府は30年に訪日客6000万人、消費額15兆円という目標を掲げるが、実現には解決すべき課題も多い。(鈴木瑠偉)

「欧米から」伸びる

 1月上旬の東京・銀座では、年末年始を日本で過ごす訪日客の買い物姿が目立った。家族でフランスから訪れたという男性(42)は、「日本は清潔で買い物がしやすい。物価も安い。友人にも勧めたい旅行先だ」と話した。

 24年は外国為替市場で一時、1986年以来の水準となる1ドル=161円90銭台まで円安・ドル高が進んだ。ユーロに対しても円は下落し、欧米からの訪日客数が伸びた。イタリアからは前年比約5割、米国やドイツ、フランスからは前年比3割強増え、1人当たりの消費額も増加した。

 2024年12月の免税売上高は、大丸松坂屋百貨店で前年同月比5割弱、高島屋では3割増えた。交通機関の利用も好調で、JR東海の24年4~9月の訪日客関連の収入は520億円となり、コロナ禍前の18年同期に比べて2・2倍となった。

 ホテルなどの宿泊施設も収益が拡大している。東京商工リサーチの調べで、国内のビジネスホテル8ブランドの24年7~9月の客室単価は前年同期比13%高い1万3088円となった。宿泊料は上昇しても訪日客数は増えている状況だ。

統計上は「輸出」

 日本経済に占める訪日客消費の存在感も高まっている。訪日客消費は統計上、輸出に分類される。財務省が公表している貿易統計の主要品目の輸出額(24年1~11月)を年率換算したものと比べると、訪日客消費は半導体や鉄鋼を上回り、日本の主要な輸出品である自動車に次ぐ規模になる。

 日本総合研究所の後藤俊平研究員は「生産拠点の海外移転などで輸出産業は伸び悩んでいる。訪日客の経済効果は、日本経済を先導する成長ドライバーになっている」と指摘する。

 ただ、急激な増加に受け入れ態勢が追いついていない。観光庁の調査によると、東京や大阪ではホテルなどの宿泊施設の客室稼働率が8割ほどに達し、受け入れ余地は乏しくなっている。

 訪日客の玄関口となる空港や航空業界の対応も中長期的な課題となりそうだ。24年にはジェット燃料の不足で新規路線の就航が滞る場面があったほか、空港の地上業務では人手不足が深刻化している。

 みずほリサーチ&テクノロジーズの坂中弥生氏は、航空便や宿泊施設の人材確保など供給側の整備が不足し、30年の訪日客数が4381万人にとどまると試算する。国土交通省も「6000万人という目標達成に、現在の対応で十分なのかという思いがある」(担当者)と危機感を示す。

 観光客の集中に伴うオーバーツーリズム(観光公害)の解消も課題だ。対応策として宿泊税の導入や拡充も広がっている。長野県や千葉県で導入に向けた議論が進むほか、京都市は今月、最高1万円に引き上げる方針を発表した。

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