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韓国大統領拘束 冷静な議論で事態収拾を図れ

読売新聞 / 2025年1月16日 5時0分

 韓国では大統領が退任後に逮捕される歴史が繰り返されてきたが、現職大統領が身柄を拘束されるのはこれが初めてである。国内外に与えた衝撃は計り知れない。

 尹錫悦大統領による非常戒厳をめぐり、尹氏を内乱などの容疑で捜査している高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)と警察などの合同捜査本部が、尹氏に対する拘束令状を執行した。

 捜査当局は今月3日に尹氏の拘束を試みたが、ソウル市内の大統領公邸を警護する警護庁職員に阻まれた。今回は尹氏側が自ら出頭することを提案したが、当局は拒否し、身柄拘束に踏み切った。

 尹氏は国民向けの談話を出し、「流血の事態を防ぐため、出頭に応じることにした。捜査を認めるわけではない」と述べた。

 警護庁と捜査当局という国家機関同士のにらみ合いは、与野党の根深い政治対立を反映する形となっていた。深刻な衝突がぎりぎりのところで回避されたのは不幸中の幸いだった。

 尹氏が起訴されれば、内乱罪での刑事裁判と、憲法裁判所での弾劾だんがい審判が並行して進む異例の展開となる。弾劾が成立すれば、尹氏は失職し、60日以内に次期大統領選が行われる。

 尹氏は、取り調べや法廷で、非常戒厳の宣言は「大統領の統治行為」だとして、正当性を主張していくとみられる。

 尹氏は昨年12月、野党が国政を麻痺まひさせたなどとして唐突に非常戒厳を宣言し、国会などに軍を派遣した。韓国憲法は大統領に非常戒厳を出す権限を与えているものの、これが大混乱を招いた直接の原因であるのは間違いない。

 一方、左派系最大野党や捜査当局は、尹氏の宣言は内乱罪にあたると主張している。

 内乱罪は、憲法秩序を乱す目的で暴動を起こした場合に適用される。首謀者と認定されれば、死刑または無期の懲役刑か禁錮刑が科される重罪である。

 尹氏側と野党、捜査当局の言い分は真っ向から食い違っている。国会で過半数を占める野党は、大統領代行の首相まで弾劾訴追するなど攻勢を強めているが、かえって支持率は急落している。

 国民は、混乱を増幅させている野党にも嫌気がさしているのだろう。北朝鮮は今年に入って弾道ミサイルを2度発射するなど挑発を強めている。

 与野党ともに、司法手続きにのっとった冷静な議論を通じ、事態収拾を図るべき時ではないか。

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