来月来日するピアニストのラン・ラン…練達のピアノ披露、若手育成にも力
読売新聞 / 2025年1月17日 17時0分
中国出身のピアノ界のスーパースター、ラン・ラン(42)が2月に来日してリサイタルを開く。練達のピアニストに成長したかつての天才少年は、今後の目標をどこに定めるのか。世界を股にかけた幅広い活動について聞いた。(松本良一)
コロナ禍を経て、ニューヨーク、パリ、上海を拠点に世界中を飛び回る日々が戻ってきた。コンサートは年100回ほど。「オフの日も忙しい。息子と遊ぶために『スパイダーマン』についても勉強しなくちゃいけない」と苦笑いする。気さくで飾らない人柄が世界中で愛されるゆえんだ。
サンサーンスの「動物の謝肉祭」ほかを収めた最新アルバム(グラモフォン)は、カジュアルで肩の凝らない仕上がりだ。「フランス音楽に集中的に取り組み、ファランクやタイユフェールといった知られざる女性作曲家も紹介したかった」。持ち味の流麗で軽やかなタッチでハイセンスの極みを聴かせる。
デビューから四半世紀。その間に世界のクラシック音楽界は様変わりし、国際コンクールで上位入賞するアジア出身の演奏家が増えた。「ただしその後、芸術家としていかに精進するかが重要です」とクギを刺す。「レパートリーを広げ、多くの人と交わり、プロとしての意識を高めていくことが欠かせない」。それは自らたどってきた道でもある。
10代で渡米し、バレンボイムら世界的な音楽家の支援で優れた音楽教育を無償で受けることができた。その恩返しのつもりで2008年、ニューヨークで「ラン・ラン国際音楽財団」を設立。クラシック音楽の普及や若い音楽家育成に取り組む。米国や英国、中国などで学校の音楽教育と連携した教育プログラムを展開し、「今後は日本やフランス、南米にも広げたい」と意欲を見せる。
「音楽だけの狭い世界に閉じこもっていてはいけない。何がしたいのか、明確な展望があった方がいい」。夢は世界に羽ばたく若い音楽家を発掘し、ひのき舞台に送り出すこと。「もちろん私自身も頑張らなければ。何事にもフルスロットルで臨みます」。常に前向きでタフな精神が、その演奏に輝きを与えている。
リサイタルは2月6日午後7時、東京・赤坂のサントリーホールで。曲目はシューマンの「クライスレリアーナ」、ショパンのマズルカ(12曲)ほか。チケットは完売。10日に大阪公演もある。
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