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トレーニング事故で右目失明、ハンデ乗り越えJリーガーに…J3高知入団「諦めている子供の励みに」

読売新聞 / 2025年1月17日 7時13分

ボールを使ったトレーニングに打ち込む松本光平さん(大阪市で)=近藤誠撮影

 トレーニング中の事故で右目の視力を失ったサッカー選手の松本光平さん(35)が、今季からJ3リーグに初参入する高知ユナイテッドSC(高知U)へ入団した。左目の視力も0・01程度まで落ちたが、失明のハンデを乗り越え、「Jリーガーになる」という夢をかなえた。(運動部・平野和彦)

 大阪市出身。セレッソ大阪、ガンバ大阪の下部組織でサイドバックとしてJリーグでのデビューを目指したが、トップチームには昇格できなかった。「外国で実績を残せば、Jクラブの目に留まる」と高校卒業後に海外へ渡り、欧州やオセアニアなどで10年以上プレー。着実に力をつけ、ニューカレドニアのチームに在籍した2019年には、世界の強豪が集うクラブワールドカップ(W杯)に出場した。

 事故が起きたのは20年。ニュージーランド(NZ)の自宅でトレーニング中、ゴムチューブを留めていた金具が外れ、右目を直撃し、左目にもチューブが当たった。帰国後、手術を受けたが、右目は失明し、左の視力も低下した。医師に復帰を相談すると、「できるわけがない」と言われたが、「(運動することが)ダメでなければやりたい」と再起を決意した。

 リハビリは過酷だった。公園で歩くところから始めたが、「乗り物酔いみたいに吐き気を催した」と何度もうずくまった。ボールはボヤッと見える程度。遠近感がつかめず、足の裏で止めることすらできなかった。初心者向けのフットサル教室でもミスばかりで、参加者にボールの止め方を教えられた。中学、高校の練習に加わっても足を引っ張った。それでも、「今、恥をかかないと大きな舞台に立った時、もっと恥をかく」と自らに言い聞かせた。

 視力を補おうと、知人トレーナーの下で対象物を目で追ったり遠近感を養ったりした。筋トレで当たり負けしない体を作り、手を使って相手の動きを感じ取る技術も習得。フットサルで俊敏な対応力と細かいスキルを磨き、トップリーグでプレーできるまでになった。

 スポンサーの支援を受けながらの地道な努力が実り、23年にNZのチームと契約し、3年ぶりに復帰した。目の保護のため試合中もサングラスを欠かせないが、「けがの前よりプレーの幅は広がった」。昨季はソロモン諸島でプレーした。

 今季も海外へ渡る計画だったが、高知Uからオファーが届き、契約に至った。16年に誕生した高知Uは昨季、日本フットボールリーグ(JFL)で2位に入り、J3の19位チームとの入れ替え戦で、悲願のJリーグ入りを決めた。補強を進める松山周平強化部長(48)は「(松本さんは)しっかりした技術、体力を備え、若い選手の刺激にもなる」と期待する。

 「Jリーガーになるという目標が支えになった」という松本さんは「ここがゴールではなく、これからが大切。一日も早くピッチに立ちたい」と意気込む。事故の後、目の不自由な子どもと交流する機会が増え、新たな思いが芽生えた。「見えないことでスポーツを諦めている子どももいる。僕がJリーグの舞台に立つことが励みになれば」。2月16日からのリーグ戦を心待ちにしている。

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