光回線サービス「シェア・満足度ランキング」の意外な結果 携帯大手の満足度が低い理由は?担当者に聞く
J-CASTニュース / 2025年1月16日 18時44分
光回線でインターネットとつながる(写真はイメージ)
あなたは自宅のインターネット回線、何を利用していますか。
デジタル市場専門の調査会社「MMD研究所」(運営元はMMDLabo、東京都港区)が2025年1月8日に発表した「2024年光回線のシェア・満足度調査」によると、約7割が光回線サービスを利用している。
しかし、光回線サービスのシェア上位は「ドコモ光」「SoftBank 光」「フレッツ光」だが、総合満足度では「eo光」「NURO 光」「コミュファ光」がトップ3に。なぜ、満足度とシェアの順番が異なるか? 調査担当者に聞いた。
シェアは「ドコモ光」「SoftBank 光」、満足では「eo光」「NURO 光」
MMD研究所の調査(2024年12月6日~10日)は、18歳~69歳の男女5万人が対象だ。
光回線は光ファイバーを利用した有線での通信手段で、Wi-Fiは電波を使った無線での通信手段だ。Wi-Fiは光回線と異なり、電波が届く範囲であればケーブルの接続なしでインターネットに接続できる。だが、光回線のほうが通信速度の安定性や高速性などに優れているとされる。
調査では、自宅のインターネット回線を聞くと、「光回線」(67.1%)が最も多く、次いで「CATV回線」(12.4%)、「ホームルーター」(9.9%)となった。
光回線の利用者にどのサービスを利用しているかを聞くと、「ドコモ光」(NTT東日本/西日本提供)が最も多く、次いで「SoftBank 光」(ソフトバンク提供)、「フレッツ光」(NTT東日本/西日本提供)、「auひかり」(KDDI提供)、「eo光」(関西電力提供)となった【図表1】。
光回線の利用上位10サービスを対象に、サービスの総合満足度を聞くと、満足の割合(「満足」と「やや満足」の合計)は「eo光」がダントツに多く、次いで「NURO光」(NTTのダークファイバー網とSo-netのプロバイダサービスを利用した独自回線)、「コミュファ光」(中部テレコミュニケーション提供)の順となった【図表2】。
シェアでは6位の「eo光」、7位の「NURO光」、11位の「コミュファ光」が、総合満足度ではトップ3になったわけだ。
興味深いことに、コストパフォーマンス、通信速度、顧客サポート、開通までの早さの4項目の個別満足度を見ても、すべて「eo光」がトップだった。文句なしの一人勝ち状態である。
ちなみに、コストパフォーマンスの2位は「NURO光」、3位は「コミュファ光」。通信速度の2位は「NURO光」、3位は「auひかり」。顧客サポートの2位は「コミュファ光」、3位は「J:COM NET光」(auひかりの回線を使用し、J:COM提供)。そして、開通までの早さの2位は「ドコモ光」、3位は「auひかり」という結果だった。
総合満足度トップ3は、エリアが限られていることが課題
J‐CASTニュースBiz編集部は、MMD研究所の調査担当者に話を聞いた。
――光回線サービスのシェア上位が「ドコモ光」「SoftBank光」「フレッツ光」なのに、総合満足度では「eo光」がダントツの1位、2位「NURO 光」、3位「コミュファ光」と、シェアと満足度の順位が一致しないのはなぜですか。
自動車や電化製品などは、品質の人気とシェアの順位がほぼ一致しますが、光回線サービス業界の独特の理由があるのでしょうか。
調査担当者 光回線業界でシェアと満足度の順位が異なる理由は、業界特有の構造によるものです。大手キャリアの「ドコモ光」や「SoftBank 光」は携帯電話とのセット割引の充実や提供エリアが広い一方で、総合満足度が必ずしも高いわけではありません。
シェアは利用者の多さを図る指数のため、利用者が多い場合はリテラシーが高くない人も増加します。そのため、満足度と相関しない傾向があります。
一方で、「eo光」や「NURO 光」「コミュファ光」などは、通信速度やコストパフォーマンスが評価され総合満足度が高いものの、提供エリアが限られるためシェアが伸びにくい特徴があります。
このように光回線業界では料金やセット割が契約動機に影響し、品質が直接シェアに結びつきにくいという他業界にはない特性があると考えられます。
――満足度が高い「eo光」「NURO 光」「コミュファ光」はそれぞれどんな特長があるのでしょうか。
調査担当者 「eo光」は関西エリアを中心に展開されており、独自回線を利用して高速かつ大容量の通信を提供、通信速度の安定性やコストパフォーマンスが高い点が特長です。ただし、利用可能エリアが関西地方に限定されています。
「NURO 光」は独自回線で高速、大容量の通信が可能です。通信速度の安定性やコストパフォーマンスが高いことが特長です。提供エリアが23都道府県に限られていて(2024年12月時点)、開通までに時間がかかることが課題です。
「コミュファ光」は、愛知県を中心とした中部地方で展開しています。独自回線を使用しているため混雑が少なく高速で安定した通信が強みですが、利用可能エリアが中部地方に限られます。
携帯大手の光回線、通信の混雑と顧客サポートが課題
―― 一方、シェアが高い「ドコモ光」「SoftBank光」「フレッツ光」「auひかり」にはどんな特長があるのでしょうか。
調査担当者 「ドコモ光」は全国対応で、ドコモの携帯電話とのセット割引が利用者にとって大きな魅力です。また、選べるプロバイダーの種類が多い点も特長です。ただし、フレッツ光の回線を利用している特性上、同じ回線を他の利用者と共有するため混雑しやすいことがデメリットです。
「SoftBank 光」はソフトバンクのスマートフォンとのセット割引やキャッシュバックキャンペーンが充実しており、全国展開で契約しやすいのが強みです。しかし、顧客サポートの満足度が相対的に低いことが課題です。
「フレッツ光」はNTTが提供する回線を使用しており、ほぼ全国で利用可能です。他事業者が回線を借りて提供する形態も多く選択肢が豊富です。一方で、多種多様な料金体系が存在しており、複雑なことが課題です。
「auひかり」はauのスマホとのセット割引や通信速度の安定性が評価されています。ただし、全国対応のドコモ光やSoftBank光と比べ、提供エリアが狭いことがデメリットです。
エリア格差の解消と、料金体系の透明性の向上が課題
――なるほど、光回線サービス業界は今後どうなっていくでしょうか。業界の課題は何でしょうか。
調査担当者 光回線サービス業界は、今後さらなる高速化や地方展開の強化が進むでしょう。5G(第5世代通信)やIoT(あらゆるモノをインターネットに接続する技術)の普及により、光回線の需要は依然として高いと考えられます。一方で、いくつかの課題も存在します。
まず、地域によって利用できるサービスの選択肢が限られていることからエリア格差の解消が重要です。次に、料金体系の透明性の向上が課題です。セット割やキャンペーンが多様化しているため、消費者にとって分かりやすい料金設計が必要とされています。
さらに、通信品質のさらなる向上が求められます。業界全体がこれらの課題に取り組むことで利用者の満足度が高まることが期待されます。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
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