阪神大震災30年 記憶を胸に備え充実させたい
読売新聞 / 2025年1月17日 5時0分
日本列島は常に大地震の脅威に
阪神大震災の発生から30年を迎えた。大都市を襲った震度7の直下型地震は、高層ビルや高速道路を倒壊させ、市街地をがれきと焼け野原に変えた。
今の高層ビルが立ち並ぶ街並みからは、戦後日本の「安全神話」を根底から揺るがした当時の光景は想像しがたいだろう。
神戸市長田区では昨年10月、最後に残った約20ヘクタールの再開発事業がようやく終了した。
ただ、土地売買の交渉が難航する間に商店主らが転出し、商業区画は今も売れ残る。震災2か月後に行政主導で決まった巨大事業は「失われた30年」に重なる経済情勢の変化に対応できず、期待した活気は戻らなかった。
計画は柔軟性ときめ細かさを欠いていなかったか。大災害で被災した各地で続く復興の街づくりに教訓を残したと言えよう。
危機管理体制の整備、建物の耐震化など、国や自治体の備えは阪神大震災がベースとなったが、積み残された課題も少なくない。
劣悪な避難環境下で、被災者が持病の悪化などによって亡くなる災害関連死はその一つだ。
関連死は阪神大震災で初めて認められ、921人が犠牲者数に含まれている。当時、避難所で被災者が雑魚寝する状態だったのを教訓に、段ボールベッドや簡易トイレなどが普及した。
ところが昨年の能登半島地震では、避難所で物資の受け入れ体制が整わないなどの理由から、30年前と同じ光景が繰り返された。
国や自治体は、平時から備蓄や専門の民間人材育成などを進めておくことが欠かせない。
13日には日向灘を震源とする地震で、南海トラフ地震臨時情報(調査中)が発表された。リスクは高まっていないと判断されたが、警戒を怠ってはならない。
歳月とともに懸念されるのは記憶の風化だ。備えを「我が事」と考えてもらうためにも、30年前の経験を伝え、継承する取り組みを支えていく必要がある。
石破首相は2026年度中の「防災庁」創設を掲げている。
大災害後の指揮はもちろん、事前の防災・減災から災害後の復興に至るまで、切れ目ない対応は国の責務だが、そのために新たな省庁は必要か。組織ありきではなく、まずは施策の充実を図ったうえで議論を深めていくべきだ。
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