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阪神大震災30年、復興住宅から消えた「輪」…住民同士の立ち話見られず「通院以外にほとんど外出しない」

読売新聞 / 2025年1月17日 6時38分

復興住宅「西宮浜4丁目住宅」。団地棟前の広場にある平屋の建物(中央)が閉鎖された集会所(兵庫県西宮市で)

 兵庫県や神戸市、西宮市など県内11市が管理する阪神大震災の復興住宅約1万9000戸で入居者の高齢化が進み、集会所が閉鎖されるなど住民同士のコミュニティーが崩れつつある。震災から30年になると、復興住宅はどんな姿になるのか。他の被災地にも共通する課題として検証する。

■集会所閉鎖

 「西宮市営西宮浜4丁目住宅」(4棟計349戸)では、住民が2023年8月、集会所の鍵を市に返却した。共益費徴収などを担う住民組織「管理運営委員会」が19年に解散し、利用機会が激減したためだ。

 入居世帯の半数近くが被災世帯で、高齢化率は53・1%。最後まで鍵を管理していた被災者の女性(77)は「組織を運営してきた住民が年を取り、新しく入ってきた世帯に役員を担ってもらえない。時代ですかね」と漏らす。

 餅つきや七夕などの年中行事にカラオケイベント、葬儀――。以前は集会所を中心に住民の輪ができていた。10年ほど前までは日常だった住民同士の立ち話も今はほとんど見られない。車いす生活を送る被災者の女性(72)は訴える。「通院以外にほとんど外出しない。集会所でお茶会でもしていたら行きたいよ。誰がこんなんにしたん」

 同様の事態は他でも起きており、神戸市と西宮市によると、19年以降の鍵の返却は計7か所。高齢になった住民の入院や死亡が相次ぎ、配偶者の介護で閉じこもりがちになる人もいる。

■優先入居が影響

 震災20年の直前に初めて5割を超えた入居者の高齢化率(65歳以上の割合)は、震災30年で54・3%。入居者の6割以上が入れ替わったのに依然として高い。震災後、高齢者など経済的に自力での住宅再建が困難な世帯が優先的に入居したことも影響している。

 兵庫県内のある自治体の担当者は「高齢化やコミュニティー弱体化は一般公営住宅でも深刻だが、復興住宅はその一歩先を進んでいる。今後は福祉的な対策が必要になる」と語る。

■東北の被災地でも

 東日本大震災の被災地の復興住宅でも、コミュニティー作りに苦労している。

 高齢化率が約5割の宮城県気仙沼市では、自治会がない復興住宅が3か所。市は震災後、住民の結びつきを深める活動をする「地域支援員」を派遣して自治会作りを促してきたが、今も担い手が見つからない。従来の地縁から切り離されて入居するため「まとめ役」が生まれにくいという。

 同市で活動する見守りボランティア団体代表、菊田忠衛さん(74)は「公的支援がなくなると、住民がバラバラになりかねない。神戸を教訓に今こそ対策を練る必要がある」と話す。

住民との交流支援 必要

 どんな手が打てるのか。阪神大震災で長年、見守り活動に携わった「よろず相談室」の元代表・牧秀一さん(74)は「災害弱者が集中するのが復興住宅の弱点。まずはこれを変えるべきだ」として、「明舞めいまい団地」(神戸市、兵庫県明石市)での大学生の居住促進の取り組みをお手本に挙げる。

 高齢化に悩む同団地では11年から、大学生に安く県営住宅を貸し出している。自治会参加などを条件にこれまで34人が入居し、大学生が早朝、敷地内の広場でラジオ体操の集まりを企画し、高齢の住民が参加する交流も生まれている。

 関西大の越山健治教授(復興計画)は「被災者が減り、高齢化で結びつきが脆弱ぜいじゃく化するのは当たり前なのに放置されてきた。集会所を住民以外にも開放し、まちづくり団体など外部の人と住民が交流する機会を作れるよう、行政が支援するべきだ」と指摘している。

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