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「管理職になってよかった」6割、「メンタルが壊れた」7割...喜び感じながら仕事をする方法は/マイナビ・瀧川さおりさん

J-CASTニュース / 2025年1月17日 17時23分

「管理職になってよかった」6割、「メンタルが壊れた」7割...喜び感じながら仕事をする方法は/マイナビ・瀧川さおりさん

悩む管理職(写真はイメージ)

管理職は喜び半分、悲しみ半分なのだろうか。

管理職になってよかったと思う人が6割いる半面、心身の健康が損なわれた人が7割もいることが、就職情報サイトのマイナビ(東京都千代田区)が2025年1月9日に発表した「マイナビ転職『管理職の悩みと実態調査』」でわかった。

せめて、管理職になったからには明るく、前向きに仕事をしたいもの。その方法を『マイナビ転職』編集長の瀧川さおりさんに聞いた。

悩む管理職、会社に望むサポートは「管理職手当の増額」だけ

マイナビの調査(2024年9月20日~26日)は、20代~50代の管理職800人(20代51人、30代349人、40代と50大各200人)が対象。

まず、管理職になってよかったかを聞くと、「よかった」と感じている人は約6割。係長・チーム長クラスでは約半数に留まるが、役職が上にいくほど多くなり、本部長クラスは約8割にのぼる【図表1】。

自由回答で聞くと、「部下の成長に喜びを感じる」「自分の課を持ってある程度自由な采配ができる」「給料面で余裕ができ家庭も安定する。苦労が多い分、やりがいが大きい」など声が相次いだ。

管理職になって年収が上がった人は約8割で、上昇額の中央値は約100万円だった。管理職になってよかった人の年収中央値は700万円だが、良かったと感じていない人は550万円で、約150万円の差があった【図表2】。

一方、管理職になってからの人生の変化を聞くと、「心身の健康が損なわれた」という人は約7割、「プライベートや家族との時間を楽しめなくなった」という人も半数超おり、心身や私生活に問題を抱えながら管理職を続ける姿が浮き彫りになった【図表33】。

仕事上の悩みでは、「業務の負荷が大きい」に加え、「パワハラなどハラスメントと言われるのを避けたい」「部下が成長しない」などを訴える人が多く、部下の指導に苦労している様子がうかがえる。

このため、今後昇格したい人は約半数に留まり、次長課長以下の役職では「管理職を辞めたい」人も約2割いる。興味深いのは昇格の希望の調査結果だ。どうせ昇格するなら「別の会社で昇格したい」という人が結構多く、「今の会社で昇格したい」という人の5~8割いることだ【図表4】。

そして、会社に期待するサポートや制度の変更を聞くと、サポートや制度の変更を望む人は2割程度で、「管理職手当の増額」が約4割とダントツに多かった。給料のアップ以外に今の会社に期待するものはないということだろうか。

本部長・部長が見る景色と、課長・係長が見る景色は違う

J‐CASTニュースBiz編集部は調査をまとめた『マイナビ転職』編集長の瀧川さおりさんに話を聞いた。

――【図1】を見ると、「管理職になってよかった」と感じる割合が、係長クラスでは約半数ですが、本部長クラスでは約8割と、上位にいくほど高くなっています。やはり責任が重くなると、それだけ仕事が充実して面白いということでしょうか。

瀧川さおりさん 部長や本部長などのトップマネジメント層も、係長やチーム長のロワーマネジメント層も、いずれも「管理職になってよかった」理由としては、「部下から頼られることが増え、やりがいのある仕事が増えたこと」などをあげる人が多い。頼られる喜び、権限の大きさや仕事の面白さ、自身の成長実感に関するコメントが目立ちました。

また、管理職は下の階層から昇進していきますから、初めて管理職になる係長やチーム長は、まだ部下との向き合い方の経験値に差があり、ストレスを感じやすいという点があります。一方、部長や本部長になると、さまざまな悩みやストレスを抱えながらも乗り越え、成果を出してきた「管理職が向いている人」である可能性が考えられます。

――上にいくほど管理職の苦労を積んできただけに、上から見える景色も喜びが満ちているわけですか。中間の課長クラスはいかがですか。

瀧川さおりさん 「現在の職務」を役職別に聞くと、役職が低いほど「上司の補佐」が増えます。課長クラスは、マネジメントと細かな作業の双方の役割を求められる側面があるのかもしれません。

また、課長は「部下のモチベーションをあげること」「上司の補佐」「部下への指摘」などの職務が多いです。部長が会社の方針に理解があり、モチベーションの高い人材と接することが多いのに比べ、課長はモチベーションから経験スキルまでさまざまなレベルの一般社員と接する傾向にあります。

コメントでも「部下ガチャによって評価が上下する」とあり、ロワーマネジメント層ならではの気苦労もあることかと思います。

「管理職になってよかった感」に年収が大きく関連

――なるほど。課長が一番大変かもしれませんね。ところで、管理職になってよかった人という年収の中央値が700万円なのに比べ、よくなかった人という人の年収は550万円です。やはり年収の差も大きいということですか。

瀧川さおりさん 「管理職になってよかった感」に年収が大きく関連していることは充分考えられます。「働きと給与が見合っているか」という問いに対し、見合っていると回答した人は、部長職は約半数ですが、次長・課長は4割、係長とチーム長は3割に留まります。

また、管理職になると残業代がつかなくなり、管理職手当がついても総年収があまり増えないケースもあります。役割やストレスが増える代わりに、せめて年収が見合っていれば報われるのに、という切実な気持ちを抱える人もいると考えられます。

――管理職になって「心身の健康が損なわれた」という人が多いのは、悲しくなりますね。それでも管理職になってよかったと思う人のほうが多いのはなぜですか。

瀧川さおりさん 「今後の昇格」の問いで「管理職を辞めたい」と回答した人が、次長・課長・係長の層では各2割前後います。また、先ほど述べましたが、部長・本部長はさまざまなキャリアの選択肢のなかから、その企業での昇進を望み、認められてきた人であると考えられます。

回答者の性質上、管理職に向いている人が集まりやすいことを踏まえると、初めて管理職になった係長レベルでは「管理職になってよかった」と感じる人、感じない人がほぼ半々という結果が、リアルな温度感かもしれません。

もっとも、管理職を続けていくうちに自分で成果を出すことより、部下の成長が喜びになるなど、考え方が変わっていく方もいます。

――中間管理職の多くが「プレイングマネジャー」になっており、業務負担が多すぎるばかりか、部下の育成・教育やパワハラなど難しい問題を一手に背負わされています。

瀧川さおりさん たしかに現在の職務を聞くと、「自身もプレーヤーとして成果をあげる」と回答した人が係長レベルだと約半数。「上司の補佐」も、比較的ロワーマネジメント層が高い傾向が見られ、求められることの多さに負担を感じている人は少なくないと考えられます。

コメントにも「担当外でも何でも仕事を振られる」「自分の仕事が進まない」「責任と、個人の目標が増えて残業が大幅に増えた」と、苦労がうかがえるものが多く見られました。

管理職の悩みの大半は「部下」が原因、解決策は難しい

――ところで、「別の会社で昇格したい」という人が、各管理職層で「今の会社で昇格したい」という人の約6~7割もいる実態に驚きました。会社に期待するサポートでも、ダントツに多いのは「管理職手当の増額」です。会社は「管理職のあきらめの気持ち」にもっと真剣に向き合うべきではないでしょうか。

瀧川さおりさん 「管理職手当の増額」に回答が集中した理由の1つとして、「会社がこれをしてくれれば、今抱えている悩みのほとんどが解決する」というような、シンプルで明確なサポートを用意する難しさが考えられます。

というのも、管理職の悩みの大きな部分は部下が関係するもので、一人一人の部下によって課題が異なり、さらに、若手に関しては仕事に対する考え方も多様化しています。皆同じような接し方ではなく個別の対応が求められ、汎用性のあるサポートが難しいのです。

だから「どのみち苦労は絶えない。だったらせめて見合うだけの報酬を」という気持ちで回答したのかもしれません。そこで、「見合う報酬」と併せて注目したいのが、今の会社での昇格意向に「相談できる相手の有無」が大きくかかわっている点です。

――管理職の悩み専門の相談相手ですか。

瀧川さおりさん 管理職を辞めたいと答えた人の約半数が「今の会社で相談できる人がいない」と孤独感を覚えています。手近な相談相手としても、忙しい上司に相談するのは気後れしてしまうもの。

その上司自体が悩みの種である場合があります。また、相談したいが、「部下の悪口を言っているように捉えられる」とか「管理職としてふさわしくない振る舞いでは」とためらうケースもあるかもしれません。

「優秀な人と仕事ができる」管理職だから得られる喜び探そう

――う~ん。わかりますね、その気持ち。

瀧川さおりさん 会社としてできることは、悩みを気軽に相談できる窓口の周知や、管理職研修などを通して、同じ階層のもの同士で交流の場を用意し、悩みを分かち合える場を作ること。それによって気持ちを吐き出し、ノウハウを共有し合い、「このような困りごとは、どのように解決していけばいいのか」と一つ一つに対してアクションが取りやすくなります。

昨今の管理職は「部下への寄り添い、コミュニケーション」など、気持ちのケアを求められる傾向があります。その管理職に対しても、同様のケアが必要なのではないでしょうか。

――最後に、悩みつつもやりがいを感じている管理職の人々と、これから管理職になる若手に熱いエールとアドバイスをお願いします。

瀧川さおりさん 調査では、ネガティブな部分だけではなく「優秀な人と仕事をすることが増え、日々の学びが多い」「一人ではできないことをチームで達成する喜びがある」「部下に頼ってもらえるのがうれしい」など、管理職にならなければ得られなかったものを得ているという声も多く見られました。また、給与アップ面では、管理職になることが一つの選択肢であることは、紛れもない事実です。

ひと口に管理職と言っても、会社によって待遇や役割がさまざまです。「今の会社では管理職は難しそう」という場合は、他の会社でキャリアアップしていくことを視野に入れるという選択肢もあるでしょう。

今は興味がなくても、今後キャリアを重ねていく中で、管理職を目指すという選択肢を検討してみてもいいかもしれません。私たちマイナビ転職は、みなさんが理想の生き方やキャリアに近づいていけるよう、さまざまな情報提供を通じて応援しています。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)



【プロフィール】
瀧川さおり(たきがわ・さおり)

新聞社、メーカーの企画部門などを経て、2004年にITサービス、翌年にオーガニック製品の会社設立に携わり、2社の役員を兼務。
マイナビ入社後は大手企業専属チームで中途採用や採用ブランディングなどを支援。サービス企画やtoB向けマーケティング企画部門を経て2021年にサイト運営部門に配属。
2024年より総合転職情報サイト『マイナビ転職』の編集長に就任。
マイナビ転職公式YouTubeチャンネルや企業向けオンラインセミナーなどで転職や中途採用市場に関する情報を配信中。

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