NTTのグループ企業、陸上養殖事業に続々と参入…ICTの知見生かしエビ・サケなど効率よく育てる
読売新聞 / 2025年1月18日 7時40分
NTTグループの企業が陸上養殖事業に続々と参入している。情報通信技術(ICT)の知見を水質や水温の管理に生かし、エビやサケなどを効率良く育てる。陸上養殖は漁業権が不要で、新規参入する企業が相次ぐ。自然環境の影響を受けにくく、魚類の安定供給の面でも期待されている。
NTT子会社のNTTグリーン&フードは昨年12月、静岡県磐田市で陸上養殖施設の操業を始めた。スズキから借り受けた部品工場の一角に26基の水槽を並べる。バナメイエビ(シロアシエビ)の稚エビを4か月程度育てて出荷する計画で、年度内に「福えび」というブランドで初出荷を目指す。
地下からくみ上げた海水と淡水を混ぜ、水温や酸素濃度を24時間管理している。AI(人工知能)による自動制御の導入も視野に入れる。グリーン&フードの久住嘉和社長は「陸上養殖は海の環境を忠実に再現しなければならず、NTTのお家芸であるICTが武器になる」と話す。
NTTコミュニケーションズも陸上養殖の子会社を設立し、12月から事業を始めた。独自の
陸上養殖には近年、大手企業がAIや通信の技術を活用して相次いで参入している。徹底した管理で生育を早めたり、出荷量を増やしたりすることを目指している。
通信業界では、ソフトバンクも高級食材のキャビアが採れるチョウザメの陸上養殖に取り組む。卵を多く持つ魚をAIで判定する技術の研究などを進めている。
他の業界でも、JR四国は昨年8月、サーモンの養殖事業に参入した。同12月に初めて出荷し、東京都内のホテルなどに販売した。
九州電力は専門業者などと、福岡県の火力発電所の敷地内にサーモンの陸上養殖場を設置し、23年10月に出荷を始めた。県内のスーパーなどで流通している。
温暖化による海面温度の上昇や外国漁船による乱獲などの影響で、国内の漁獲量は減少し続けている。日本は食料自給率が38%(カロリーベース)にとどまり、魚類の安定供給につながる陸上養殖は食料安全保障にも役立つと期待されている。
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