「嫁校」に冷ややかな女性、今の中国社会は「女性にだけ出産促している」…習政権の「圧力」感じる若者たち
読売新聞 / 2025年1月18日 7時25分
【北京=川瀬大介】中国国家統計局は17日、香港、マカオを除く中国本土の総人口が2024年末時点で14億828万人となり、前年から139万人減少したと発表した。中国の人口が3年連続で減少するのは、1949年の建国後初めて。
構造的な問題
24年の出生数は954万人で、前年比52万人増だった。中国で子どもを産むと縁起が良いとされる「
ただ、3年連続で1000万人を割り、今回も一時的な増加との見方が一般的だ。65歳以上の人口は2億2023万人で、総人口に占める割合は前年から0・2ポイント増の15・6%となった。少子高齢化が進む現状が改めて浮き彫りとなっている。
中国では、毛沢東による大増産運動「大躍進」の失敗で多数の餓死者が出た1960、61年に2年連続で人口が減少したことがある。
これに対し、2022年に本格化した人口減は、より構造的な問題が背景にあるだけに深刻だ。長年の「一人っ子政策」に伴う出産適齢期の女性の減少に加え、晩婚化や女性の独立心向上といった価値観の変化による少子化が要因として挙げられている。
「教習所」
「若者の結婚や恋愛、出産観に対する指導を強めなければならない」。習国家主席の号令の下、中国では各地で出産や結婚を促す取り組みが強まっているが、これを「圧力」ととらえる若者との間でギャップも広がっている。
1月、湖南省長沙市の中心部にある観光スポットを歩くと、赤字で「嫁校」と書かれた看板が目に入った。入り口の脇には「適齢期の結婚」などと書かれた飾りが並ぶ。地元政府が昨年10月、出産や結婚に対する若者の理解を広げようと開いた宣伝施設だった。
「嫁校」は、中国語の自動車教習所(駕校)と同じ読みで、意味合いは「結婚教習所」となる。出産に関する国家政策や知識をクイズ形式で学ぶことができ、赤ちゃんのおむつ交換や陣痛の痛みの疑似体験も可能だ。習氏の人口論も展示し、ガイド役の女性は「全国唯一の施設よ」と胸を張った。
ただ、この日は見学者の姿はほぼなく、若者の多くが素通りしていた。地元のある女性(20歳代)は「今の中国社会は、女性にだけ出産を促しているようにみえる。SNSでは施設への批判ばかりで入る気がしない」と冷ややかに語った。
強国路線に影
中国では、当局者が住民の女性に電話で出産計画を尋ねたり、出産を促したりする動きも相次ぐ。
SNSには「『子どもが2歳になるからもう妊娠できますよ』と言われた」「間もなく40歳なのに3人目を産むよう促された」といった書き込みが見られる。未婚の大学生に出産を促すケースもある。露骨と言える干渉に「胸くそが悪い」などと怒りの声が上がっている。
結婚を巡っても、政府などが昨年9月に「1万人合同結婚式」を開催するなど、挙国体制での支援をアピールしているものの、機運上昇にはつながっていない。23年に10年ぶりに増加した婚姻数は、24年に再び減少に転じる可能性が高い。
国連の昨年7月の推計によると中国の人口は、今世紀末には6億3300万人へと半減する見通しだ。習政権が掲げる強国路線に、加速する人口減が影を落としかねない情勢となっている。
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