バイデン氏退任 米国の苦悩を体現した4年間
読売新聞 / 2025年1月19日 5時0分
二つのトランプ政権のはざまで、米国が民主主義や国際秩序の崩壊をなんとか食い止めようと苦しんだ時代として、記憶されるのではないか。
バイデン米大統領が20日に退任する。時代の変化に押される形で、トランプ次期大統領に代表される「自国第一」の孤立主義と、国際協調路線の間を揺れ動いてきた米国の苦悩ぶりを体現したかのような4年間だった。
バイデン氏は就任以来、「民主主義を守る」と訴えてきた。しかし、退任演説では、一握りの権力者による「オリガルヒ」(新興財閥)が米国で作られつつあり、状況はむしろ悪くなっている、との認識を示さざるを得なかった。
巨大IT企業トップや大富豪のイーロン・マスク氏らを指しているのは明らかだ。トランプ氏にあからさまに接近し、政権運営に影響を与えようとしている。
バイデン氏はこれらの「テック産業複合体」が偽・誤情報を
外交では国際協調を重視し、日本や韓国など同盟国との関係を強化した点は評価できよう。インドなどを交えた多国間協力の枠組みも構築し、アジア太平洋地域の安定に大きく貢献した。
パレスチナ自治区ガザの戦争は、退任直前に停戦合意にこぎつけた。だが、ロシアのウクライナ侵略を批判する一方で、イスラエル軍のガザ侵攻を容認してきたのは「二重基準」だとして、国際社会の不信を招いた。
コロナ禍を抑え込み、米国経済を未曽有の好況に導く一方で、インフレが加速した。生活費の高騰への国民の怒りや、移民流入を容認して雇用や安全を脅かしているとの批判に
退任間際になって、日本製鉄によるUSスチール買収阻止を命令した。トランプ氏に奪われた白人労働者層の支持をつなぎとめる狙いがあったのだろうが、きわめて残念である。
昨年の大統領選では再選をめざしたが、高齢に伴う衰えが目立って撤退に追い込まれた。決断の遅れがトランプ復権につながったという
しかし、敗因はそれだけだろうか。民主党支持だった黒人や女性の間でもトランプ支持が増えた理由を冷静に分析しない限り、リベラル勢力再建は難しいだろう。
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