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羽田衝突事故受け「声に出して」復唱を明記、海上保安庁が内規改定…「簡素に」の文言削除

読売新聞 / 2025年1月19日 5時0分

 海上保安庁が、東京・羽田空港での航空機衝突事故を受け、管制官による指示・許可の内容を機長と副操縦士が相互に確認する方法の内規を改定したことがわかった。「声に出して確認する」と明文化したことで、復唱確認の徹底を目指す。ただ、海保機内では事故当日、重要な復唱確認が複数欠けていたことも判明。新たな内規の実効性確保が急務となりそうだ。

 運航中の機長と副操縦士は、主に操縦を行う「PF(パイロット・フライング)」と管制官との交信など操縦以外を担う「PM(同モニタリング)」を分担する。

 海保によると、昨年1月の事故当時、海保の航空機運用規程は管制官とPMの交信内容について、「交信終了後、PFは簡素に復唱等して内容を(PMと)相互に確認する」と定めていた。

 事故ではC滑走路への進入直前、交信を担った副操縦士(当時41歳、死亡)が「滑走路手前の停止位置C5まで走行。ナンバーワン、ありがとう」と管制官に英語で復唱した。これを受け、PFの海保機長(40)は、離陸順1番の情報提供にあたる「ナンバーワン」と口にし、続けて「C5、問題なしね」と復唱確認した。

 しかし、「滑走路手前の停止位置まで走行」という管制指示を声に出して確認せず、副操縦士も完全な復唱確認を求めないまま「問題なしです」と返答。海保機は滑走路に誤進入した。

 「基本を大きく外れ、不十分な相互確認だった。『簡素に復唱等』と定めていても、滑走路の進入に関わる重要な指示・許可を省く理由にならない」。海保機内の復唱確認について複数の国土交通省関係者や民間パイロットはそう指摘するが、海保関係者は「『簡素に』と記した当時の運用規程では(今回の不十分な復唱確認を)排除できていなかった」とする。

 海保は事故を受け、研修・訓練の強化や機体の視認性向上などの安全対策を進めてきた。その一環で昨年7月末、運用規程から「簡素に復唱等」という文言を削除し、「管制指示の内容を声に出して確認を行う」と改めた。中でも滑走路への進入・接近時や離陸時には、指示が「滑走路進入可」と「手前で待機」のいずれなのか、文言を声に出して相互確認するよう特記した。

 国交省航空局が監修する運航マニュアル集「エイアイエム・ジャパン」でも、パイロット2人が管制官の指示を確実に理解するための確認手順の一環として、「PFは、自分自身が理解した(管制官の)指示の内容を口に出して、PMに確認してもらう」ことを推奨する。改正後の運用規程は、これに合致したものとなった。

 海保の航空業務管理室は「改正前からPFによる復唱確認の実施を指導・徹底してきたが、より確実に誤進入を防ぐ観点から内容を具体化した」と説明した。

 一方、海保機内ではC滑走路への誤進入時以外にも、基本動作からの逸脱が繰り返されていた。

 運輸安全委員会が音声記録から再現した「操縦室内の様子」によると、管制官から〈1〉B滑走路の横断許可〈2〉A滑走路の横断許可とその後の走行指示〈3〉誘導路C末端のC滑走路手前停止位置への走行指示――を受けて副操縦士が復唱した際、機長は必要な復唱確認をせず、副操縦士もそれを指摘しなかった。

 ほかにも操縦室内での離陸打ち合わせを途中で打ち切るなどしており、ある民間パイロットは「終始一貫して、基本動作にルーズな印象は否めない」と話した。

 海保は「改正した運用規程は、基本事項として訓練や研修で徹底していく」としている。

対策強化と内規順守の徹底必要

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