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デジタル教科書、通信トラブルや検定対象の範囲に懸念残る…学習効果不明のまま推進

読売新聞 / 2025年1月19日 8時55分

 文部科学省が、紙の教科書の「代替教材」としているデジタル教科書を正式な教科書に位置づけたうえで、紙とデジタルのどちらを使うかは各教育委員会が決める「選択制」の導入を検討していることが18日、わかった。実現すれば、デジタルだけで学ぶ児童生徒が出てくることになる。学校教育の基盤となる教科書のあり方を大きく転換するもので、議論を呼びそうだ。

 文部科学省がデジタル教科書の位置づけを見直そうとしているのは、学校現場に浸透していないデジタルの使用拡大を図るためだ。デジタルの様々な弊害が指摘される中、学習効果が明確に裏付けられていないデジタル教科書の使用を無原則に認めることには問題が少なくない。

 教科書は現在、国公私立を問わず全ての小中学生に、紙のものが全教科で無償配布されている。デジタル教科書が導入された後も、ほとんどの学校は紙の教科書で授業を行っている。

 しかし、デジタル教科書が現行の「(紙の)代替教材」から正式な教科書に変われば、将来、デジタルしか使えない児童生徒が出てくる。1人に1台配備された学習用端末では通信環境が不安定な時や、故障・紛失時には教科書を見られなくなる。読売新聞が昨年11~12月に全国の小中学校長を対象に行ったアンケートでは、デジタル教科書を使用する懸念(複数回答)として、162人の回答者のうち59・9%が「通信トラブル」、48・1%が「端末の紛失や破損」を挙げた。

 紙の教科書は学校教育法で唯一、正式なものとされており、厳格な教科書検定を経て質が担保されている。

 一方、紙と同じ内容の現在のデジタル教科書は、検定の対象外だ。今後、動画や音声を多数取り入れることが見込まれ、ネットを通じて関連資料を載せたサイトにも誘導できる。文科省内からも「どこまでを教科書として検定対象とするのか、線引きが難しい」(幹部)との声がある。

 文科省は、各地の教育委員会が紙かデジタルのどちらかを選ぶ制度の導入を検討するが、読売新聞のアンケートに答えた小中校長の95・1%が「紙とデジタルの併用」を希望した。学校現場では、デジタルの使用拡大で「集中力がそがれる」「授業と関係のない動画や画像閲覧に使われる」といった懸念が広がる。

 東北大の大森不二雄教授(教育政策)は「教科書の形態変更が学校教育にもたらす結果は重大だ。教育効果に関する科学的知見が不十分なまま現場に丸投げするのは責任転嫁ではないか」と語る。

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