ロシアがイランと軍事技術協力へ新条約署名、アメリカや欧州をけん制…有事の相互支援は盛り込まず
読売新聞 / 2025年1月19日 11時20分
【テヘラン=吉形祐司】ロシアのプーチン大統領とイランのマスード・ペゼシュキアン大統領は17日、軍事技術協力の発展を盛り込んだ「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名した。米国のトランプ次期大統領就任を前に、緊密な連携を誇示する狙いがありそうだ。
プーチン氏は署名後の記者会見で「ロシアとイランは重要なパートナーだ」と強調。「困難があっても克服し、前進できると確信する」と述べ、両国に制裁を続ける米欧をけん制した。
ロシアは侵略するウクライナでの戦況が不利になれば、戦争終結を掲げ仲介に乗り出すトランプ氏に主導権を握られる恐れもある。カギを握るのは兵器の調達だ。イランは、北朝鮮と並び米欧の制裁を気にせず兵器の供給を受けられる国の一つ。ロシアは既に無人機やミサイルの供与を受けているとされ、条約で供与の加速も予想される。
条約の有効期間は20年。47項目の冒頭で「安全保障と防衛分野の協力強化」を明記し、情報機関の協力や軍事演習の連携を定めた。ロシアが昨年、北朝鮮と結んだ条約に盛り込まれた有事の際の相互軍事支援は入っていない。
イランにもロシアとの関係強化は不可欠だ。制裁下で戦闘機などの部品調達が難しく昨年はイスラエルの攻撃で防空網の弱さを露呈した。アザド大学のモハンマドレザ・ジャライ教授(国際関係論)は「条約で最も重要なのは軍事協力。抑止力強化には近代的な戦闘機も必要だ」と話す。対露軍事協力はイランに「最大限の圧力」で臨むトランプ政権へのけん制にもなる。
ただ、ウクライナ情勢を巡り、ペゼシュキアン氏は記者会見で兵器供与には触れず、「戦争は問題解決に適した手段ではない。平和実現のためロシアとウクライナの交渉を歓迎する」と語るにとどめた。イランは制裁で維持・管理が難しい石油・ガスの老朽化施設への投資などエネルギー分野での協力にも期待を寄せる。
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