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半世紀稼働「弁当自販機」、茨城のドライブインに全国からファン…店主が手作り「機械と体が続く限り」

読売新聞 / 2025年1月20日 18時40分

長年稼働してきた自販機と弁当をPRする鈴木さん(昨年12月10日、茨城県稲敷市で)

 千葉県との県境沿いを走る茨城県稲敷市の国道51号。潮来市方面に進むと、黄緑色の看板が右側に見えてくる。「あらいやオートコーナー」。現在では珍しい「弁当自動販売機」のお店だ。テレビやユーチューブにも取り上げられており、全国各地から人が訪れている。(久保田夢)

 ガラス戸を開き、小さな小屋の中に足を踏み入れると、所々さびついた大きな自販機が目に入る。「売り切れランプがつきません」「500円いりません」。古びた注意書きの貼り紙も、店の長い歴史を感じさせる。数枚の硬貨を入れると、ラップと包装紙に包まれた温かい弁当が下から出てきた。

 店を切り盛りするのは鈴木一之さん(54)で、隣接する自宅で弁当を調理している。鈴木さんによると、自販機が設置されたのは約半世紀前の1972年。その頃、ドライバーらに食事や休憩の場を提供する「ドライブイン」が流行していた。「うちでもやってみよう」と、父・守さん(83)が弁当の自販機を中古で購入したのがきっかけだ。当初はハンバーガーやうどん、そばなどの自販機も置いていたが、経年劣化が進み、現在は弁当の自販機だけが稼働している。

 元々、この弁当を作っていたのは、今は亡き母・永子さんだ。8年ほど前、体調を崩したのをきっかけに、鈴木さんが店を手伝い始めた。それまで20年以上、サラリーマンとして働いていたが、学生時代に飲食店でアルバイトしていた経験などが弁当づくりに生きたという。現在は、昔からの定番の「やきにく」「からあげ」「ひれかつ」に加え、「メンチかつ」や「ハンバーグ」など計7種類の弁当を提供している。

 特に評判なのが「やきにく」。脂がのった豚肉は甘辛い味付けで、ごはんによく合う。味の決め手を尋ねると「秘伝のタレです」と鈴木さん。母から受け継がれたレシピの味だ。

 15年ほど前にテレビで取り上げられると、「レトロ自販機」を目当てにたくさんの人が来店するようになった。1日で平日は約100食、土日は約250食が売れることもある。

 店内には、ファンがメッセージを寄せる大学ノートが置かれている。「沖縄から車で32時間かけて来ました」「何回も通って食べたいぐらいです」――。ノートは約20冊に及んでおり、人気ぶりがうかがえる。

 弁当はこれまで1個330円と低価格を保ってきたが、材料費や光熱費の高騰を受け、今年は20円の値上げに踏み切った。「機械と自分の体が続く限り、作り続けたい」と鈴木さん。今日もファンを思い浮かべ、真心を込めた弁当を補充する。

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