月着陸へ再挑戦 民主導の宇宙開発の幕開けに
読売新聞 / 2025年1月20日 5時0分
宇宙開発の担い手は、国家から民間へと移行しつつある。日本企業も世界的な潮流に乗り遅れることなく、新たな領域を開拓してほしい。
日本の宇宙新興企業アイスペースの月面着陸船「レジリエンス」が、米国のロケットで打ち上げられた。順調に行けば5月末以降に月に到着し、民間では日本初となる月面着陸に挑む。
アイスペースは2023年に月面着陸に初挑戦したが、高度の誤認によって失敗に終わった。ただ、月周回軌道への投入など多くの難関を乗り越え、成功まであと一歩のところだった。
これまで月面着陸に成功しているのは、旧ソ連、米国、中国、インド、日本の5か国しかない。民間では、24年に米企業が初めて成功した。アイスペースが成功すれば、アジア初の快挙となる。
着陸船から小型探査車を降ろし、月の砂を採取する。この砂は、米航空宇宙局(NASA)に所有権を譲渡する。実際に砂をやりとりするわけではなく、これまで行われたことのない月面資源の商取引を成立させるのが目的だ。
宇宙開発を巡っては、1967年に発効した宇宙条約で、国による月や天体の領有を禁止しているが、資源の所有については明確なルールがない。
このため、日米欧はまず各国が資源の譲渡などに関する国内法を整備したうえで、実際に商取引を行ってルール作りを主導することを目指す。日本も2021年に「宇宙資源法」を成立させた。今回の活動はこの法律に基づく。
一方、中国は軍民融合で独自の月面開発を進める。将来、月面で水や鉱物資源を巡って各国の利害が対立する事態も考えられる。一国による専横を防ぐには、一定の国際的なルールを早期に確立することが欠かせない。
日本としては米国などと協力し、宇宙での商取引の実績を重ねながら、将来的には、宇宙開発における国際条約や国際法などにつなげることが重要だ。
アイスペースは来年以降も順次、月面着陸を実施する計画だという。月面に物資を輸送する能力を証明して日本企業の存在感を高め、今後の宇宙ビジネスの先導役を果たすことが期待される。
米国を中心に日欧なども参加する有人月面探査「アルテミス計画」が進んでいる。日本も、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のほか、アイスペースやトヨタ自動車などが参画する。官民で日本の宇宙開発に弾みをつけたい。
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