「内憂外患」の中国経済…不動産や消費など低迷、対米輸出の低下も予想「トランプ政権が最大のリスク」
読売新聞 / 2025年1月20日 6時55分
中国経済が内憂外患の状況に陥りつつある。不動産や消費などの内需はコロナ禍後も低迷しており、成長を下支えしてきた外需も主軸となる対米輸出の落ち込みが予想される。2024年の成長率は前年比5・0%増で政府目標を達成したものの、25年はトランプ米次期大統領の政策が最大のリスク要因となる。(中国・武漢 山下福太郎)
低い購買意欲
湖北省武漢市の旧「華南海鮮卸売市場」。70近い眼鏡店が軒を連ねる2階フロアは19日、週末にもかかわらず客足はまばらだった。男性店主は「所得が増えず、購買意欲は低いままだ」と話す。19年12月以降、1階にあった海鮮市場の関係者に新型コロナウイルスの感染が広がった。市場は移転したが、現在も眼鏡店街は苦境が続いている。
「以旧換新」(古い物を新しく)。旧市場から1キロほどの量販店では、政府の消費喚起策を告知する横断幕を掲げる。自動車や家電、携帯電話などの購入者に補助を行う。政府は最大3000億元(6・4兆円)を投じるとしているが、効果は限定的とみられる。
駆け込み輸出
17日発表の24年の経済統計は、消費動向を示す小売り売上高の伸び率が23年の7・2%から3・5%に半減した。中国の住宅価格指数(10年=100)は、21年9月の113をピークに昨年6月には97に下落。中国の家計資産の6割を占める不動産の価値が減り、国内総生産(GDP)の4割に当たる個人消費を抑制する負の循環が続いている。
コロナ禍の間、中国経済は強権的な封鎖政策で抑えられ続けた。120前後で推移していた「消費者信頼感指数」は、上海封鎖が本格化した22年4月に90を割り、現在も回復の兆しはない。大和総研の斎藤尚登・経済調査部長は「政策の効果が出にくくなっている」と指摘する。
24年に5・0%成長を達成できたのは、外需の貢献があったからだ。消費や不動産と並ぶ中国経済の3本柱の輸出は、23年の4・6%減から24年は5・9%増となった。対中関税強化を掲げるトランプ政権が誕生する可能性を見据え、駆け込みで対米輸出を強化した可能性がある。
成長率下押し
25年の中国経済は「トランプ政権が最大のリスク」(斎藤氏)となる。3月の全国人民代表大会(全人代)で示される25年の成長率目標は「5%前後」になるとの見方が多いが、達成へのハードルは高そうだ。
トランプ氏は、大統領選で中国からの輸入品に一律60%の関税を課すと主張。選挙後の昨年11月には、まず10%の追加関税を適用すると表明した。大和総研の試算では、10%で中国のGDPは0・14ポイント下押しされる。60%だと1・29ポイント下押しされ、25年の成長率は3%台にまで落ち込む。
共産党政権は昨年12月、25年の金融政策を緩和的にし、財政政策も「より積極的」とすることを打ち出した。ともに十数年ぶりの見直しで、内需を刺激して経済の落ち込みを防ぐ狙いだが、効果は見通せない。
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