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岡山から世界ベルトをつかんだユーリ阿久井政悟…「地方の星」の支えは反骨心〈関西発 月イチ! SPORTS〉

読売新聞 / 2025年1月21日 6時0分

 「地方の星」が輝きを放っている。世界ボクシング協会(WBA)フライ級王者のユーリ阿久井政悟選手(29)(倉敷守安)は昨年1月、岡山県内のジム所属選手として初めて世界王座を獲得。2度の防衛にも成功した。現在9人いる日本人世界王者のうち、大都市圏以外に在籍するのはユーリ阿久井選手だけ。地方を拠点とする選手の希望の光となっている。(滝口憲洋)

 昨年1月、22戦無敗(15KO)の王者アルテム・ダラキアン選手(37)を破り、初めての世界戦で王座を奪取。試合後には、二人三脚で頂点を目指してきた守安竜也会長の腰にチャンピオンベルトを巻いた。

 同じジムでプロボクサーだった父の影響もあり、中学2年でボクシングを始めた。高校時代には関東の大学から進学の誘いを受けた。関係者からは「成長するには上京した方がいい」と勧められた。

 ボクシングにとって、地方のハンデは大きい。過去102人いる日本ジム所属の世界王者のうち地方所属は数えるほどしかいない。

スパーリング相手探しにも苦労

 最大の理由は「切磋琢磨せっさたくまするライバルが少ないこと」。試合前のスパーリング相手を探すのは一苦労だ。地方では試合をしても注目されにくく、のし上がりにくいのも壁となる。減量で疲弊した体で計量前に大阪や東京へ数時間かけて移動するだけでも不利になる。

 それでも地元にとどまった。「自信がなかった」と謙遜気味に話し、「その代わりじゃないけど、この岡山で絶対にチャンピオンになってやろうと思った」。故郷とジムへの愛着が、その後の原動力になった。

 2014年にプロ転向し、全日本新人王に輝いた。成長をさらに加速させた転機が、17年8月の初黒星。現在は世界ボクシング評議会(WBC)バンタム級王者となったサウスポーの中谷潤人選手(27)にTKO負けし、「上で戦うには、このままじゃダメだ」と感じた。

 岡山では左構えの相手と練習ができず、対応できなかった。つてを頼って東京や大阪のジムに“出稽古”し、試合に向けた練習を重ねるようになった。母校の環太平洋大(岡山市)で学んだトレーニング論を独学で深め、練習メニューも組み立てた。最近は同大学の施設を使い、低酸素トレーニングなども取り入れている。

「一生懸命に、常に貪欲に」

 工夫や努力を重ね、頼れるものは活用する。愚直に高みを目指し、世界王者へとたどり着いた。「地元を離れられない、故郷で頑張りたいというボクサーだっている。その目標になれれば」と語る王者は「周りに力を借りなきゃいけないこともあるし、困った時は誰かを頼ればいい。一生懸命やればチャンスはつかめる。常に貪欲にいけばいい」とエールを送る。

 強烈な反骨心も支えになってきた。「地方の田舎小僧が、東京でぶっ倒して帰ってきたら、絶対みんなびっくりする。『なんだこいつは』ってなる」と笑う。次なる目標は、他団体の王者との統一戦。熱望するビッグマッチを見据えて「技術も体も、まだまだ成長できる」と意気込む「地方の星」に陰りは見えない。

(関西発 月イチ! SPORTSは、スポーツを「楽しむ」ための様々なトピックを掲載します)

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