サイバー攻撃 狙われる先端技術や安保情報
読売新聞 / 2025年1月21日 5時0分
他国の関与が疑われるサイバー攻撃は、日本の安全を揺るがす重大な脅威だ。巧妙化する手口に対し、政府はもちろん、企業も最大限の防御体制を築くことが重要となる。
警察庁は、中国系のハッカー集団「ミラーフェイス」による日本の政府機関や企業、学術団体などへのサイバー攻撃が2019年以降、210件確認されたと発表した。研究者や政治家など、個人への攻撃も含まれているという。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)では1万件以上のファイルが流出し、半導体の関連企業や防衛省も標的となった。先端技術や安全保障に関わる情報が盗まれた可能性があり、事態は深刻だ。
ミラーフェイスは、中国の情報機関に協力する別のハッカー集団とのつながりが指摘されているグループである。警察庁は「中国政府の関与が疑われる組織的なサイバー攻撃だ」と表明した。
警察が、他国政府とサイバー攻撃の関係に踏み込んで言及するのは異例だ。中国をけん制すると同時に、日本の国民に注意を呼びかける狙いがあるのだろう。
攻撃は、メールに「マルウェア」と呼ばれる悪意あるプログラムを添付したり、システムの
企業の元幹部らを装って「勉強会案内」といったメールを送り、受信者の関心を引きつけて、マルウェアが添付されたメールを開封させるケースなどがある。
不審な点があれば、送信者とされた当人に対し、本当にメールを送ったか確認するようにしたい。社員は全員国内にいるのに海外からログインがあるなど、異常な状況を見逃さないことも大切だ。
他国の関与が疑われるサイバー攻撃は、ほかにもある。昨年は北朝鮮系のハッカー集団の攻撃で、日本の暗号資産会社から多額のビットコインが流出した。
ロシアは、ウクライナに侵攻する前からウクライナの重要インフラのシステムに侵入し、破壊工作の準備を進めていたとされる。現代は、武力攻撃とサイバー攻撃が同時に展開される傾向が強い。
日本国内では、銀行や病院などへのサイバー攻撃も相次いでいる。政府は、攻撃を受けてから対応するだけでなく、攻撃の予兆を捉えて無害化する「能動的サイバー防御」の導入を急ぐべきだ。
効果的な運用には、専門人材の確保が欠かせない。政府は民間からも人材を登用し、国民生活や機密情報を守らねばならない。
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