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観光客増で源泉水位低下、「日本三大美肌の湯」で対策に知恵絞る…くみ上げ量上限設定や日帰り客停止

読売新聞 / 2025年1月21日 7時25分

 「日本三大美肌の湯」として知られる佐賀県嬉野市の嬉野温泉で、源泉の水位が低下し、嬉野温泉旅館組合が対策に乗り出している。県も昨年12月、県内の温泉で初めて、湯のくみ上げ量の上限を数値目標として定めた。新型コロナウイルス禍で落ち込んだ観光客数の回復でくみ上げ量が増えたことなどが背景にあり、同組合は温泉資源の保護のため、事業者と知恵を絞っている。(立山芽衣、森陸、小林夏奈美)

新幹線開業が契機

 嬉野温泉は江戸時代に長崎街道の宿場町として栄え、現在も約30のホテル・旅館が並ぶ。2022年9月に西九州新幹線が開業すると新駅が設置され、観光客数は増加。23年の観光客数はデータが残る00年以降、最多だった17年の207万人を上回る見込みだ。

 観光客の増加で、湯のくみ上げ量も上昇。県がまとめた源泉の水位によると、21年に年平均で約50メートルだった水位は、昨年約40メートルに低下した。

 嬉野温泉全体では、1日当たりのくみ上げ量は2500トン程度が適正とされてきたが、冬場は需要が多く、昨年1~3月は約3000トンに達していた。

 県は昨年8月と12月、資源保護の観点から、源泉を所有するホテルや旅館などに対し、今冬のくみ上げ量の抑制について文書で要請した。1日当たりのくみ上げ量は、特に多いホテルや旅館、事業者など4者に対し、合計で上限を2400トン、温泉全体でも2800トンとする基準を示した。

「未明の利用控えて」

 現地では対策が進む。31旅館でつくる嬉野温泉旅館組合は今月、利用客に対し、午前0~5時に温泉利用を控えることを依頼するチラシを作製した。旅館「和多屋別荘」では日帰り客の受け入れも停止しており、小原嘉元社長(48)は「平日1日当たりの使用量は昨年1月と比べて15~20%削減でき、水位は回復した」と手応えを感じている。

 旅館組合は今後、温泉使用量の基準を設定したり、源泉の一括管理を導入したりすることも検討している。旅館「大正屋」の副社長で、旅館組合の山口剛理事長(52)は「水位は下がっても、湯が足りないわけではないし、泉質も変わらない。温泉を未来に残すため、将来的には源泉利用のルール作りも本格化させたい」としている。

別府では新規掘削制限

 水位や泉温の低下は各地で課題となっている。

 国際的なスキーリゾートとして知られる北海道ニセコ地区でも、温泉の過剰採取による水位低下が問題化。道は21年、ホテルが密集する一帯を保護地域に新たに指定した。

 国内有数の温泉地である大分県別府市では、泉温の低下などが確認された。県と市は20年度までに市内全源泉を対象とした共同調査を実施し、100年後に泉温が下がる地域が拡大すると予測した。県は22年4月から、温泉の新規掘削を認めない「特別保護地域」を3から5地域に増やした。

 温泉の分析や資源保護に関し、科学的な調査を実施する公益財団法人「中央温泉研究所」(東京)の大塚晃弘・統括主任研究員は「水位低下は過剰採取の状態。各源泉ではなく地域全体で適正採取量を見極め、無駄な利用をなくすことが重要だ」と指摘している。

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