夫の家事育児は「満足」、初めて「不満」上回る 専門家が指摘...「家オペ力」は仕事でも役立つ(1)
J-CASTニュース / 2025年1月21日 19時48分
一緒に料理を作る若い夫婦(写真はイメージ)
ようやく「イクメン」時代の到来か?
働く主婦・主夫層のホンネ調査機関「しゅふJOB総研」(東京都新宿区)が2024年1月7日に発表した「夫の家事負担調査」によると、夫の家事・育児への取り組みに「満足」という人が初めて過半数を超えた。
過去の調査では「不満」という妻のほうが多かった。仕事に家庭に頑張る夫へのエールを専門家に聞いた。
妻「何でもやってくれるので感謝しかない。ありがたいです!」
しゅふJOB総研の調査(2024年11月26日~12月8日)は、就労志向のある既婚女性631人が対象。
まず、2024年を振り返り、夫は家事・育児に十分を取り組んだと思うかと聞くと、「満足・不満はない」が53.2%、「不満あり」46.7%と、ここ3年の調査で初めて「不満なし」が半数を超えた【図表1】【図表2】。
夫が取り組んでいた家事は、子どもいる・いないともに「ゴミ出し」が最多で、次に「買い物」「掃除や片づけ」の順。
そして、2024年を振り返って夫がもっと取り組んだほうがよいと思うものを聞くと、子どものいる女性では「掃除や片づけ」「名もなき家事」「料理」の順となった【図表3】。「名もなき家事」はいつも1位だったが、今回初めて2位になった。
「名もなき家事」とは、料理、洗濯など名前がついていない家事のこと。「洗濯前に、脱いだ衣類のポケットから中身を取り出す」「脱いだ後の洗濯物の袖を裏返す」「トイレットペーパーを交換する」「食事後の食器をキッチンに運び、テーブルを拭く」「靴やスリッパを揃える」など、日常にあふれる細かな家事の数々。
さらに、夫が取り組んでいた家事と、夫がもっと取り組んだほうがよい家事とのギャップを表わしたグラフが、夫の家事・育児の「取り組み不足度」だ【図表4】。これを見ると、やはり「名もなき家事」がダントツ1位であることは変わりない。
「なめくさっている。腹が立つ」の声も
フリーコメントでは「満足している」という人からこんな意見が相次いだ。
「何でもやってくれるので感謝しかないです。これ以上することはないです。ありがたいです!」(50代:今は働いていない)
「自分の休みの日は献立を考え、料理をしてくれるようになり助かっています。あと重い買い物も手伝ってくれたらもっと助かります」(60代:契約社員)
「在宅ワークに伴い、周りの若いパパたちがかなり家事、育児をしている様子を見ることが増え、夫も感化されたようです」(40代:パート/アルバイト)
「夫は激務で夜遅く、ひどいときは深夜まで仕事をしています。それでも時間を作って、子どもの送迎やお風呂入れ、家事もできる範囲でとてもよくやってくれています」(30代:今は働いていない)
一方、「不満あり」の人からは厳しい意見が寄せられた。
「自分の仕事と思っていない。手伝ってやった、俺がしてやったという言い方をする。残業で遅くなると、お前の仕事は家事だろうと言う」(50代:パート/アルバイト)
「なにもしないし、家に一番いないはずなのに、一番家を汚す」(40代:今は働いていない)
「家事・育児は女がやるものとなめくさっている。腹が立つ」(40代:パート/アルバイト)
「家事を一切してこなかった人間なので、夫が1人残った場合、どうなるんだろうと今から心配しています」(60代:パート/アルバイト)
「名もなき家事」に気づき、夫の「覚醒」が始まった
J-CASTニュースBiz編集部は、研究顧問として同調査を行い、雇用労働問題に詳しいワークスタイル研究家の川上敬太郎さんに話を聞いた。
――過去3年で初めて夫の家事・育児に「満足」が半数を超えました。ズバリ、「よかった」とプラスに評価しますか。それとも「まだまだ道遠し」と厳しく評価しますか。
川上敬太郎さん 過去3年、「不満あり」のほうが過半数だったことを踏まえるとよかったと感じます。世の夫が頑張り、その頑張りを感じている妻たちが増えてきていることが表れているように思います。
ただ、「満足」だけを見ると、まだ4分の1程度。家事や育児、介護など、家オペレーションをめぐる課題および改善余地はまだまだたくさんあるのだと思います。
――「取り組み不足度」では、以前から夫側の課題になっていた名もなき家事の割合が低くなりましたね。これは、夫が行う家事がよりきめが細かくなったということでしょうか。
川上敬太郎さん 今回、私個人としてとても嬉しく思ったのがこのデータの変化です。名もなき家事をめぐっては、大きく2つの段階があります。
まず、その存在に気づくこと。次に、それに対処すること。しかし、そもそも存在自体が目に入っておらず、最初の段階でつまずいている夫がたくさんいます。
存在に気づくには、自分が家事を行う主体者であるという認識を持つことが必須です。空になったシャンプーを詰め替える行為は、名もなき家事の一種ですが、詰め替え終わったらその容器を捨てることや、詰め替え用の予備を買い足すこともまた名もなき家事です。
家事とは家庭運営の循環の中で都度発生するものですから、一つひとつは単体ではなく、つながりがあって全体がひとつなぎになっています。しかし、家事の主体という認識がないと全体像が見えず、詰め替えただけで家事が完了したと思ってしまいがちです。
――なるほど。家事は連続作業なのですね。
川上敬太郎さん 「シャンプーがなくなったから、詰め替えといたよ」と夫から聞いた妻が確認しにいくと、詰め替えた後の容器がその場に放ってある。すると、夫は妻からほめられるどころか、「容器もちゃんと片づけて!」と叱られることになる......。このようなギャップが生じるのは、家事の全体像が見えているか、いないかが大きな原因です。
そんな、名もなき家事をめぐるギャップはまだまだ大きいものの、「取り組み不足度」が減少していることは、それだけ家事の主体者という認識を持つようになった夫が増えつつある可能性を感じます。
そこにもまた夫の頑張りが表れていますし、ご家庭にとって望ましいことだと思います。名もなき家事に気づけるかどうかは、家庭内での視野の広さと比例すると言い換えることもできます。
それだけ家庭内での夫の視野が広がってきていることを意味している可能性もあるのではないでしょうか。
<夫の家事育児は「満足」、初めて「不満」上回る 専門家が指摘...「家オペ力」は仕事でも役立つ(2)>に続きます。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
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