「トランプ頼み」のウクライナ、前線で苦戦強いられ妥協も容認か…プーチン氏も対話に前向き
読売新聞 / 2025年1月22日 0時21分
ロシアによるウクライナ侵略を巡り、停戦交渉に意欲を見せてきた米国のトランプ大統領が20日就任した。前線で苦戦を強いられるウクライナはトランプ氏の交渉力に望みを託し、一定の妥協も容認する構えを示す。ただ、ロシアは自国に有利な形での決着を目指す姿勢を崩しておらず、交渉は難航が予想される。
「トランプ大統領は常に決断力がある」
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は20日のトランプ氏の就任直後、SNSに投稿した。トランプ氏が掲げる「力による平和」が「長期にわたる公正な平和を実現する機会をもたらす」と強調。停戦交渉でウクライナの意向を可能な限り反映してほしいとの期待感をにじませた。
ゼレンスキー氏がトランプ氏に頼らざるを得ない背景には苦しい戦況がある。ウクライナ軍は東部で露軍に押し込まれており、昨年8月に越境攻撃を始めた露西部クルスク州でも反攻され、露国防省はウクライナが一時制圧した露領土の6割超を奪還したと公表した。同州では露軍を支援して北朝鮮兵が参戦している。
昨年12月、ゼレンスキー氏は2022年2月の侵略開始以来、ウクライナ兵約4万3000人が戦闘で死亡したと明らかにした。脱走兵も相次ぐなど人的資源の枯渇も目立つ。
そうした実情を踏まえ、ゼレンスキー氏はトランプ氏主導の停戦交渉に備え、現実路線に傾きつつある。2年以上ウクライナの全領土奪還を掲げてきたが、領土は停戦後に「外交手段で取り戻すことが可能だ」と述べ、軟化しつつある。
また、北大西洋条約機構(NATO)への即時加盟を主張してきたが、トランプ政権が慎重な姿勢だとみるや、安全を確保するため英仏が協議する有志国軍による平和維持部隊のウクライナ派遣案も容認する姿勢を見せ始めた。
ロシアも表向きは対話に前向きな構えを示す。
プーチン大統領は20日、トランプ氏の就任に先立ち、安全保障会議で閣僚らを前にトランプ氏に祝意を示すとともに「新政権とウクライナ紛争に関する対話の用意がある」とも語り、秋波を送った。
ただ、プーチン氏は停戦交渉の条件にウクライナのNATO加盟断念やロシアが一方的に併合を宣言したウクライナの東・南部4州からのウクライナ軍の完全撤退、対露経済制裁の撤廃を挙げ、現時点では譲歩する意向は示していない。
トランプ氏はこれまで自身の交渉力で停戦実現は可能だと訴え、ウクライナ紛争を「就任前」や「就任後24時間以内」に決着させると豪語してきた。だが、最近は楽観的な見方を封印し、「6か月以内」と目標を後退させた。ウクライナ側にはトランプ政権が停戦実現を急ぎ、ウクライナに大幅な譲歩を迫るのではないかとの警戒感も高まっている。
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