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SNS上の悪意 人の死まで中傷する残酷さ

読売新聞 / 2025年1月23日 5時0分

 ネット空間で悪意に傷つけられる人が後を絶たない。心ない言葉は時に人の命さえ奪う。まして死者を侮辱する中傷まで横行するような状況は放置できない。

 兵庫県の斎藤元彦知事のパワハラ疑惑などを調べる県議会百条委員会の委員だった前県議が死亡した。自殺とみられている。

 前県議については、百条委で斎藤氏を追及する動画がSNS上で拡散され、中傷する投稿や嫌がらせの電話が相次いでいた。自分や家族の身の危険を感じ、「誰が家に来るかわからない。怖い」と漏らしていたという。

 兵庫県の問題では、別の死者も出ている。極めて異常かつ深刻な事態だと言えよう。

 政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首は、街頭演説で前県議の動静を情報提供するよう聴衆に呼びかけ、自宅に押しかけるような発言をしていた。

 しかも、前県議の死後には「前県議は逮捕される予定だった」と語り、まるで逮捕を苦に自殺したかのような動画を投稿した。

 これに対し、県警本部長は議会で、立花氏の発信内容を「全くの事実無根」と否定した。警察のトップがこうした形で捜査情報を明らかにするのは極めて異例だ。容認し難いと判断したのだろう。

 立花氏は県警の対応を踏まえ、動画を削除して謝罪した。だが、謝って済む話ではなかろう。

 立花氏の投稿は、多くの人が拡散し、前県議の名誉は著しく傷つけられた。立花氏、そして安易に虚偽の情報を広めたSNSユーザーたちの責任は重い。刑法の名誉毀損きそん罪は、死者に対しても成立することを認識する必要がある。

 兵庫県知事選を巡っては、知事派と反知事派の対立が深まり、知事を追及してきた県議会も激しい攻撃の対象となった。

 健全な批判と誹謗ひぼう中傷は異なる。政策などへの建設的な批判はあって当然だが、人格をおとしめたり、脅迫まがいの言葉を投げつけたりすることは許されない。言論の自由には責任が伴う。相手を傷つける自由などあり得ない。

 今回は県警の説明によって、投稿がウソだと明確になったが、SNS上には、真偽が不明なまま多くの人が信じ込んでいる情報も少なくない。誹謗中傷と並び、虚偽情報への対策も急務である。

 SNS事業者に、誹謗中傷などへの迅速な対応を求める法律が間もなく施行される。問題のある投稿を野放しにせず、厳しく対応することが求められている。

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