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デジタル教科書 義務教育の変質招く利用拡大

読売新聞 / 2025年1月24日 5時0分

 過度のデジタル化は教育に悪影響があるとしてIT先進国には教科書を紙に戻す動きがある。

 日本でも学校現場の懸念は根強い。それにもかかわらず、国はなぜ今、デジタルへの傾斜を強めようとしているのか、理解に苦しむ。

 文部科学省は中央教育審議会の作業部会に、現在は「代替教材」とされるデジタル教科書を正式な教科書に位置づけることを盛り込んだ論点を示した。2026年度までに制度を改正し、30年度から使用することを目指している。

 デジタル教科書は現在、小5~中3の英語と算数・数学の一部に導入され、紙と併用されている。これを正式な教科書に変更すれば、紙とデジタルが教科書として併存することになり、いずれも無償給与や検定の対象となる。

 作業部会では、紙のみ、デジタルのみの教科書のほか、両者を組み合わせたタイプの導入も検討している。どれを使うかは教育委員会が選ぶ形を想定している。

 どれを選択するかで、子供の教育内容に差が生じかねない。全国一律で一定水準の教育を受けられる環境を維持してきた義務教育の大転換だと言えよう。

 学びの中核にある教科書の形式をどうするのかという判断を地方に丸投げするに等しく、国の責任放棄ではないのか。

 教科書のデジタル移行が進んだスウェーデンは一昨年、学習への悪影響があるとして、紙の教科書や手書きを重視する「脱デジタル」にかじを切った。子供の成績が落ち、集中力が続かないといった傾向もみられたためだ。

 日本も同じ状況に陥らないか心配だ。スウェーデンの警鐘を重く受け止めなければならない。

 深い思考や記憶の定着には、デジタルより紙の方が優れているという研究報告が各国で相次いでいる。小中学校長を対象にした読売新聞の調査では、95%が紙との併用を望み、デジタルのみの利用に懸念を示す声が圧倒的だった。

 紙の教科書による授業に特段の支障がないのに、なぜ現場の声を無視して、効果がはっきりしないデジタルへの転換を急ぐのか。

 教科書は紙を基本とし、デジタルは動画や音声を活用できる特性を生かすという、これまで通りの代替教材にとどめるべきだ。

 コロナ禍でデジタル化の遅れが鮮明になり、国はそれを挽回したいのかもしれないが、強引に推し進めた保険証のデジタル移行は、国民の強い反発を招いた。同じてつを踏むべきではない。

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