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「削らない歯科治療」3Dプリンターの精巧型枠活用で…徳島大発のベンチャー企業開発、全国で導入広がる

読売新聞 / 2025年1月26日 14時22分

デジタル技術で作った透明な型を紹介する渡辺さん(徳島大で)

 徳島大歯学部から生まれた徳島市のベンチャー企業「amidex(アミデックス)」が、デジタル技術を駆使した精巧な型枠を使うことで、虫歯治療や矯正などで歯科医院に「削らない治療」をしてもらうサービスを提供している。「未来歯科治療」と名付け、全国で導入が広がっている。(吉田誠一)

 従来の虫歯治療では、周囲の健康な歯の部分まで大きく削って型を取り、銀歯やセラミックをはめるのが中心。接着に使うセメント部分は再び虫歯になりやすく、再治療を受けるケースも多い。

 近年は詰め物に使うコンポジットレジン(CR)というセラミックとプラスチックの混合素材の開発が進み、それを固めるペン形のLED光照射器の進化もあり、治療の幅が広がった。小さな虫歯を詰めるだけだったCR治療が歯の形を整えたり、再構築したりする治療へと発展してきている。

 白いペースト状のCRを注射器形の注入器で歯に塗り、光を当てて固める。直接歯に接着させるため、健康な歯を削ったり、型取りして作った詰め物を削って修正したりする手間が不要になる。一方で、治療範囲が広くなれば、美しく仕上げるのに歯科医の高い技術が必要で、治療時間が長い難点もある。

 同社は国産CRとデジタル技術の進化を背景に、歯科医院で簡単に美しくCR治療を仕上げてもらおうと、「未来歯科治療」として社名と同じ新サービス「アミデックス」を始めた。

 各地の歯科医が患者の口腔こうくう内をスキャナーで読み取り、データを同社に送信。同社の専門医、歯科技工士らのチームが患者に合わせた歯の型をパソコンで設計し、3Dプリンターで透明な樹脂製の型枠(特許出願中)を作る仕組み。

 各歯科医院では、送られてきた透明な型枠を患者の歯に添え、歯の色に合わせたCRを注入。LED光で固めれば、短時間で周囲の歯と見分けがつかないように仕上がる。病気やけがで歯が複数本なくなったり、欠けたりした歯でも、アミデックスで隣の歯にCRを直接接着させて新たな歯を作ることも可能だ。

 昨年4月からアミデックスを解説するセミナーを開催、オンライン配信もして、受講した歯科医にサービスを提供。全国で130以上の歯科医院が導入し、利用が広がっている。

 同社CEO(最高経営責任者)の伊原晃さん(42)は「自由診療だが、セラミックスやインプラントよりは安い。高品質な削らない治療をもっと広めたい」と意気込む。現在は歯科技工士2人が製作に励むが、自動化を進めて今年は海外展開を目指す。

 アミデックスは、CR治療の専門家で徳島大歯学部の保坂啓一教授と、矯正歯科が専門でデジタル技術が得意な大学院医歯薬学研究部助教の渡辺佳一郎さん(42)が2022年から構想して共同開発。23年8月に起業した。

 CTO(最高技術責任者)の渡辺さんは「若いうちから削ったり、神経を抜いたりしたら、長い人生で歯がもたない。『削りたくない』という患者の願いに応えたい」と語る。

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