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空き家の窃盗被害が増加…外国人グループ「家の前に草が生えているか」、地図アプリで探すケースも

読売新聞 / 2025年1月26日 5時0分

 地方の空き家の金品を狙った窃盗事件が増えている。特に東北や中部、九州の一部で被害が顕著で、全国の昨年の被害総額は11億円を超えた。前年から3億円以上も増加しており、警察当局は防犯対策の徹底を呼びかけている。(村上喬亮、山形支局 渡辺ひなの)

 「家の前に草が生えているかなどを見て、空き家を探し、アクセサリーなどお金になるものを盗んだ」。空き家への盗みを繰り返したとして、窃盗罪で実刑判決を受けたベトナム国籍の男らは昨年、山形地裁米沢支部の公判でそう語った。

 検察側は、男らがスマートフォンの地図アプリで空き家がありそうな場所を探し、家の周辺を見たり、電気や水道が使われているか確認したりしていたと指摘。盗品は中古品販売店に売って処分するなどしていたと明らかにした。男の一人は、調べに対し、「空き家なら捕まるリスクが低いと思った」と供述したという。

 警察庁によると、全国の空き家で起きた侵入窃盗事件は昨年1~11月、暫定値で8192件確認され、被害額は計約11億6000万円に上った。統計を取り始めた2020年以降、最多だった一昨年を11月末時点でそれぞれ更新している。前年同期に比べると、被害件数は1割増、被害額は6割増で、4年前の20年比で被害額は約3・7倍だ。

 昨年1~11月に地域別で件数が最多だったのは、埼玉で1058件。群馬775件、千葉673件と続き、関東での多発が目立つ。これまで被害が少なかった東北の一部では激増しており、山形は前年同期の1件から94件に、岩手は7件から89件になった。中部も増えており、静岡288件(前年同期比209件増)、山梨67件(同48件増)など。九州の一部でも熊本48件(同30件増)、大分60件(同37件増)と大幅に増えた。

 空き家が狙われるのは、人目に付きにくく、侵入後も物色しやすい上、被害発覚に時間がかかるからだ。

 近年は外国人窃盗グループによる事件が目立つ。群馬県警に摘発されたベトナム人の男女3人は、群馬、栃木、埼玉、新潟の4県で23年9月~昨年7月、空き家を中心に約420件の窃盗を繰り返していた。埼玉県警に摘発された別のグループは、「日本の空き家は家電や貴重品が残っていると聞いた」と供述した。警視庁幹部は、「比較的新しい空き家がよく侵入されている。中長期の出張などで、長く留守にしている家を重点的に狙うグループもいる」と話す。

郵便受けの回収や草刈り有効

 親が亡くなったり、施設に入居したりして、家財を置いた実家を空き家にしている人は少なくない。どう対策を取ればいいのか。

 警備大手「セコム」(東京)の浜田宏彰研究員は「管理が行き届いていない家が狙われやすい」と話す。有効なのは、郵便受けのチラシをこまめに回収したり雑草を刈ったりすること。人感センサー付きの照明やブザーのほか、夜間に在宅を装えるタイマー式の室内灯も役立つ。何重にも対策をすることで窃盗犯が諦めやすくなるという。

 2023年の総務省の調査によると、全国の空き家は約900万戸に上り、過去最多を更新。このうち居住や賃貸の目的のない「放置空き家」は約386万戸で、1993年の約149万戸から30年で約2・6倍に増えた。空き家率は地方で高い傾向になっている。

 国土交通省が空き家の所有者を対象に行った2019年の調査では、空き家のままにする理由として「物置として必要」(60%)、「解体費用をかけたくない」(47%)などが目立った。

 住宅の防犯に詳しい東京大の樋野公宏准教授(都市工学)は、「多忙などを理由に空き家を片付けずにいると、被害に遭う可能性が高くなる」とし、「実家に住む親がどこに何を置いているか確認し、相続したらできるだけ早く家財を処分することが大切」と話す。

 空き家 長期間にわたって使われていない家で、おおむね年間を通して使用実績がないことが基準の一つとされている。

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