「ゲノム編集食品」届け出制度化から5年…高GABAトマトなど流通も「知らない」9割超
読売新聞 / 2025年1月27日 8時22分
遺伝子を効率良く改変できるゲノム編集技術を使った食品の届け出制度ができてから5年がたった。これまで野菜や魚など7品目が届け出され、うち4品目が流通している。だが、ゲノム編集食品そのものを知らず、不安を覚える消費者も少なくなく、専門家は「安全性への理解の促進が不可欠だ」と指摘する。(浜田萌)
安全性「理解促進を」
昨年12月、首都圏のあるスーパーでミニトマトの試食・販売会が行われた。同一品種に比べ、血圧の上昇を抑える成分「
このトマトは筑波大発ベンチャー「サナテックライフサイエンス」(東京)が開発した。開発期間は約1年と「従来の品種改良より効率よくできた」という。2020年12月に国内第1号のゲノム編集食品として届け出し、23年3月から通販に加えスーパーでも販売。担当者は「安全性や効果を伝えながら、販売を増やしたい」と意気込む。
ゲノム編集食品の届け出制度は19年10月に始まった。高GABAトマト、小粒・多収量のジャガイモ、可食部が多いマダイ、成長が速いトラフグやヒラメなど7品目が届け出されている。
魚の3品目は、京都大発ベンチャー「リージョナルフィッシュ」が開発。国内の漁獲量が減る中、養殖の拡大につなげるのが狙いだ。冷凍の切り身や昆布締めなどをネット販売しており「社会課題解決への共感もあり、購入者の評判はいい」という。
不安の声も
ゲノム編集による品種改良は、特定の遺伝子を壊しており、自然の突然変異でも起こりうる。外部から遺伝子を加える「遺伝子組み換え」の場合はアレルギーなどの有害な影響がないかを調べる安全性審査が必要だが、国はゲノム編集では不要と判断し、届け出制にした。ただし、届け出前に安全性のデータなどを提出してもらい、遺伝子組み換えに該当しないかを専門家会議で判断している。
だが、届け出がまだ少ないこともあり、消費者の認知、理解は進んでいない。消費者庁の昨年3月の全国調査では、ゲノム編集食品を「知らない」が9割超に上った。一方、全国消費者団体連絡会の22年のアンケートでは、ゲノム編集食品のイメージを約6割が「どちらかといえば悪い」「悪い」と回答。理由は「情報が少ない」「不安」「安全と思えない」が多かった。
ゲノム編集食品に詳しい田部井豊・東洋大客員教授(育種学)は「有益なものが作れることを知ってもらわないと、消費者は不安を抱え、普及も進まない。食料問題や国民の健康にどう寄与するのかを国も示すべきだ」と指摘する。
自主的に明示
国内では2000年代前半、「国産大豆100%使用」と表示された豆腐から遺伝子組み換え大豆が検出され、騒動となった経緯がある。
国はゲノム編集食品の表示義務は不要としているが、現在流通する4品目は、各社が自主的にパッケージに記載・明示している。リージョナル社の梅川忠典社長は「しっかり表示することで、理解促進につなげたい」と話す。
◆ゲノム編集技術=狙った遺伝子を切断し、書き換える技術。従来の品種改良より効率がよく、医療分野でも応用研究が進む。外部から新たに遺伝子を組み込む場合は「遺伝子組み換え」に区別される。
アレルギーや猛暑 対応へ
国内ではアレルギーや気候変動に対応したゲノム編集食品の研究開発も進む。
広島大と食品大手キユーピーは、アレルギーを起こりにくくした卵を開発。臨床試験を実施中で、安全性が確認されれば届け出し、数年内にこの卵を使った商品の販売を目指すという。
名古屋大発ベンチャー「グランドグリーン」は、猛暑に強いトマトなどを開発中だ。丹羽優喜社長は「これまでの品種改良のスピードでは、加速する気候変動に対応できず農業の持続可能性が危ぶまれる。ゲノム編集で迅速に改良していくことで、日本の食の問題に貢献したい」と話す。
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