ＵＳスチールに日本製鉄との買収合意破棄求める株主提案、米投資ファンドが準備…米紙報道

ＵＳスチールの工場（ペンシルベニア州で）

　【ニューヨーク＝小林泰裕】米紙ウォール・ストリート・ジャーナル（ＷＳＪ）は２６日、米投資ファンド「アンコラ・ホールディングス」が米鉄鋼大手ＵＳスチールに対し、日本製鉄との買収合意の破棄と、ＵＳスチールの最高経営責任者（ＣＥＯ）解任を求める株主提案を準備していると報じた。

　アンコラは「物言う株主」として知られる。ＵＳスチール買収に意欲を見せる米鉄鋼大手クリーブランド・クリフスと近い関係にあるとみられ、買収計画の実現に影響力を持つ可能性がある。

　報道によれば、アンコラはＵＳスチールの取締役会１２人のうち、９人を指名する案を準備している。その中には、クリフス傘下で、カナダ鉄鋼大手ステルコの元ＣＥＯも含まれているという。

　アンコラは株主提案を通じ、ＵＳスチールのデビッド・ブリットＣＥＯを解任し、日鉄との買収合意を破棄するよう、他の株主に呼びかけるとしている。

　ＷＳＪによれば、アンコラが保有するＵＳスチールの株式数は不明だ。ただ、アンコラは、クリフスと同じくオハイオ州クリーブランドに本社を置く。クリフスはアンコラと連携してＵＳスチール買収を目指す可能性がある。

　クリフスは２０２３年春と夏、ＵＳスチールに買収を提案したが、いずれも拒否された。ＵＳスチールはその後、２３年１２月に日鉄との買収合意を発表した。米国のバイデン前大統領が今月、日鉄による買収計画に禁止命令を出したことを受け、クリフスは買収の検討を再度本格化させている。

　日鉄とＵＳスチールは、禁止命令には不当な政治的介入があったとして、共同でバイデン氏らを提訴している。