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志村洋子さん作品集 染織で漱石の世界表現

読売新聞 / 2025年1月30日 15時20分

志村洋子さん作の着物「夜想曲」をまとった村治佳織さん(『鏡』より、森山雅智氏撮影、アサヒグループ大山崎山荘美術館で)

 京都市在住で染織家の志村洋子さん(75)=写真=が、織物の作品集『鏡 志村洋子 そめおりの心象』(求龍堂)を出版した。夏目漱石の小説「(かい)()(こう)」を題材に、藍や紫根、桜などの植物染料で絹糸を染めて手織りした着物を英国調の建物を舞台に撮影した。「和」と「洋」が融合した独自の世界を表現している。

 洋子さんは(つむぎ)(おり)の人間国宝・志村ふくみさんの長女で、異国の文化や現代的な意匠に想を得た着物なども積極的に手がける。今回の作品集には着物やタペストリーなど計38点の織物作品を収め、「昨年9月に100歳を迎えた母にささげたいと思って作った」と語る。

 「薤露行」は英国のアーサー王伝説を基にした幻想的な短編で、漱石が英国留学から帰国後に執筆した。ふくみさんの養父が大正時代にロンドンに駐在し、漱石が下宿した場所の近くに住んだという縁もあり、洋子さんは「小説の世界に心をひかれてきた」という。

 物語は、塔の中で機織りをして暮らし、鏡を通してしか外界を見ることを許されない姫が、騎士に恋したために命を落とす悲劇。作品集では、ギタリストの村治佳織さんがモデルとなり、主人公の「機織り姫」をイメージして、洋子さんが手がけた着物を着装した。

 撮影は、大正から昭和初期にかけて建てられた京都府大山崎町の「アサヒグループ大山崎山荘美術館」で写真家の森山雅智さんが行った。重厚で陰影の深い西洋風の建築と、色彩豊かな着物が調和し、幻想的な雰囲気を醸し出している。

 英文学が専門の高宮利行・慶応大名誉教授が解説を寄稿。洋子さんと親交の深い漫画家の萩尾望都さんが、物語の場面を描いた作品を寄せているのも興味深い。

 洋子さんは「母も私も作品制作に言葉や文章は欠かせないもので、自分の内面を表現したいという思いがある。従来の着物や織物の枠を超えて、幅広い世代に関心を持ってもらえれば」と話している。『鏡』は税込み4400円。(編集委員 古沢由紀子)

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